――妻役の和久井映見さんと共演されて、いかがでしたか?

今回、和久井さんにすごく助けられたところが大きいです。あのお母さんは縁の下の力持ちで、ずっと家族を支えていたんだろうなと。子どもたちも、お母さんが中心にいて、家族がぐっと1つになっていたことを感じてくれていたんじゃないかなと。

初日から、4人家族ができあがっていた感じがありました。なんだか現場がふわーっとしているんですが、もしかして深川さんがそういう雰囲気を作ってくれていたのかもしれない。和久井さんも、大人と子どもの壁を作らない方で、4人がすんなり集まった感じがしました。

――地上波とは違う、WOWOWのドラマならではの特徴を感じたりしますか?

現場のテンポがぜんぜん違いますね。連ドラは1週間区切りだけど、このドラマは1つの作品がただ1週間ずつオンエアされている感じがします。区切りがあまりないし、演じている方も意識はしていません。だからこそ難しいところもきっとあると思うけど、それがまたとても気持ちがいいです。

今回、「……微笑」というト書きが多いのですが、地上波の連ドラでの微笑とはまた違います。画面の向こう側のお客さんが違うというか、地上波だとふらっと立ち寄って観てくれる人もいますが、WOWOW はそうではないので。変な意味、気を遣わなくていいし、もう少し脚本に忠実にできるんです。そういう意味では、映画に近いのかなと。今回、深川さんも映画の監督ですから。

――本作での手応えはいかがですか?

手応えみたいなものを、現場ではすごく感じているんです。何よりも、役者として本作に関われたことがすごくうれしくて。僕自身はいいものに関われたなあと思っています。でも、この作品を離れたら、ここで学んだことを使い切れない気もします。やはり、深川さんありきというか、深川さんしか見えてないものがあるのかなと。僕はただそこに田島として存在しているだけで、深川さんの演出から離れたら、また普通の沢村一樹に戻ってしまいそうな気もしますし。今回やったことを糧にできるかどうかはわからないけど、なんだか不思議な感覚だけは残ると思います。

――役者として、今後の展望についても聞かせてください。

僕は、53歳くらいで役者のピークにぐっと向かっていく感じでやっています。だから、その後、ピークの55歳くらいからすごく楽しくなるんじゃないかと勝手に思っていて。よく「沢村さんは、いつが一番モテました? 20代の頃とかモテたでしょう?」と言われたりします。でも、全然そうじゃなくて、今のほうがモテますから(笑)。

たぶん人生の中でいちばんモテるのも55歳くらいだろうと思っています。それが展望で、それに向かって仕事選びをしていますね。あと6年で、あっという間ですよ。その過程で、今回、今まで経験をしたことがないような現場に参加させてもらえたことは、ついてるなと思っています。50歳近くになって、こういう作品に出会えるなんて、3年くらい前までは想像もつかなかったことですし。今回、想像を超えたものと出会えたので、このまま行けば、55歳でピークを迎えられるはずです。