製造業大手のGEは現在、デジタルインダストリアルカンパニーを標榜し、IoTを活用したビジネスを推進し、単なるものづくり企業から、ソリューションベンダへと変貌を遂げつつある。そうした変化を支える文化そのものを同社は長年にわたって醸成を行い、そうした姿勢そのものから、新たな発想やビジネスモデル、そしてソリューションを生み出してきた。

GEデジタル ソフトウェア・エンジニアリング ディレクターのビニート・バンガ氏

例えば同社が提供するIoT基盤「Predix」だが、これについて、GEデジタル ソフトウェア・エンジニアリング ディレクターのビニート・バンガ氏は「インダストリアルインターネット向けアプリの開発・導入・収益化のプラットフォーム」と説明する。製造分野で活用する各種装置から大量のデータを収集、処理、分析を行うことで生産性の改善などを実現するのがIIoTの1つの目的となるが、エッジノードの各センサからクラウドに至るまで幅広い範囲をカバーし、かつ門外不出ともいえる重要な製造データを保護するセキュリティまで考えて作られたのがPredixとなる。

その主要コンポーネントが「クラウドファンドリ」で、現在同社は、同コミュニティのメンバーとして積極的な活用をマイクロサービスの活用と併せて進めているという。マイクロサービスは、アプリケーションを小さなコードの塊に分けて開発することで、1つのマイクロサービスごとにアップデートを行うことで、全体的な開発速度を向上させようというもの。ただし、各サービス間のインタラクションやバージョン管理コストなども発生することとなるが、Predixでは、そうしたコストの緩和に向けた支援や、プロセスのオートメーション化によるオーバヘッドの削減などを提供することで、そうした課題に対応しているとする。

Predixの概要 (出所:GE Digital Day 2016講演資料)

また、各レイヤごとのセキュリティを埋め込むことで、セキュア性を担保している。「アプリケーションレベルでセキュリティを構築するのみでは、プラットフォーム全体としてセキュアとは言えない。そこで各レイヤにセキュリティを統合することで、プラットフォーム上で認証やコントロールを図ることを可能とし、エッジからクラウドまでのセキュリティを実現した」という。

Predixのセキュリティの概要 (出所:GE Digital Day 2016講演資料)

加えて、Predixの特徴の1つとも言えるのがサービスの提供である。例えば、提供されるアプリケーションのアセットモデルの最適化を図るためにグラフデータベースを用いることで、アセットモデルに対する紹介を可能としたほか、分析サービスとしては、独自分析のほか、既存の分析ツールをサブスクリプションとして組み合わせるといったこともAPIを活用することで可能としている。さらに、アプリに対してセキュアにアクセスすることを担保するオーセンティケーション & オーサライゼーション(UAA)なども提供するほか、より複雑なポリシーに対応するオーサライゼーション・サービス(ACS)やマルチテナントアプリ構築のためのテナント管理アプリも提供している。

どういったサービスやアプリが活用できるかは、同社の提供するWebサイト「Predix.io」にて確認することができる。シードリファレンスも提供されており、どういったアプリが作れるのか、といったことも分かるほか、コミュニティを活用して、サードパーティのアプリなどであっても、デベロッパーに質問して回答を得たり、問題があったときのサポートチケット発行といった手続きも可能だ。「Predixはプラットフォームとしているが、その実、エコシステムそしてマーケットでもある。そういった意味では、今後もさまざまなベンダに呼びかけ、参加を促し、機能強化などを図っていくつもりだ。GEとしても、ベンダにどのようなビジネスチャンスがあるのかを見出し、サービスの改善を図っていく」とのことで、それにより、インダストリアル・インターネット/IIoTにベストなソリューションを今後も提供していくとする。

Predixのエコシステムの概要 (出所:GE Digital Day 2016講演資料)