この商品は、ボンカレー初の“ご当地コラボ”となるが、その誕生の経緯がなかなかユニークだ。話は宮崎県のプロモーション施策に飛ぶ。
宮崎県は畜産物や農作物が豊富で、そうした特産品のプロモーションに熱心だ。2011年に東国原氏の後を継ぎ、知事に就任した河野俊嗣氏も、県の特産品に対するプロモーションを積極的に行っている。そして「日本のひなた宮崎県」というプロモーションを2015年に仕掛けようとした。
これは、宮崎県が平均気温全国3位、日照時間全国3位、快晴日数2位という宮崎県の気候から「ひなた指数1位」(宮崎県独自指数)と称し、特産品のアピールに生かす施策だ。早速、このプロモーションをイメージした企画やロゴマークが練られたのだが、そのロゴが問題となった。
ボンカレーのシンボルマークとそっくりだったからだ。
五輪エンブレム盗用問題の最中のできごと
当時、東京五輪エンブレムの盗用疑惑が問題視され、報道もヒートアップ。類似したロゴでプロモーションを行ってはネットやマスコミにたたかれかねない。ところが河野知事は「ここまで似てしまったのなら、いっそボンカレーとタイアップしてみては?」という発想に至った。そして大塚食品にオファーし快諾を得て、誕生したのが「ひなたの恵みボンカレー」なのだ。
この商品は10,000食限定。大塚食品にとってみれば、わずかな売り上げにしかならず、売り切ったとしても赤字かもしれない。だが、初となるご当地ボンカレーであること、農作物や畜産物で名高い宮崎県とコラボできることなど、話題性を高めるのに絶好の機会ともいえる。
また、この商品の発表に先立ち、6月から夏限定の「野菜とけこむベジカレー」を全国で発売開始した。国産野菜を売りにしたこの商品にとって、大塚食品が宮崎県とコラボしていることはプラスに作用すると考えられる。
「夏はボンカレーの売り上げが一年で最大化する季節」(垣内氏)というとおり、まさにこれからがかき入れ時。テレビCMを打つよりも、話題になる商品をリリースしたほうが“プラス”になると考えたといえよう。