積極的なテレビCMや、5分間の通話が定額になる「5分かけ放題」などにより、仮想移動体通信事業者(MVNO)の中でも頭角を現しつつある楽天の「楽天モバイル」。新たに楽天スーパーポイントで料金が支払える仕組みの提供や、端末と通信、サービスをセットにした「コミコミプラン」などを打ち出すなど、大手キャリアに近い戦略をとりつつある楽天は、楽天モバイルで何を目指そうとしているのだろうか。

メイン回線のユーザー獲得に成功

既に200を超える企業が参入していると言われるMVNO。ここ数年で大きな注目を集めるようになったMVNOだが、大手キャリアの実質0円での端末販売が事実上禁止された影響もあってか、ここ最近一層勢いを増しているようだ。

そうしたMVNOの中でも、最近頭角を現しているのが楽天モバイルである。楽天モバイルは楽天がMVNOとなって展開しているモバイル通信サービスだが、スマートフォンとのセット契約を主体としたメイン回線の需要を多く獲得し、シェアを伸ばしていることから注目を高めている。

楽天のMVNOによるモバイル通信事業は、元々楽天傘下のフュージョンコミュニケーションズ(現・楽天コミュニケーションズ)が展開していたが、当初はデータ通信を安価に提供する「楽天ブロードバンド LTE」(現・楽天ブロードバンド データSIM)がサービスの主体。積極的なプロモーションもあまりなされておらず、どちらかと言えば知る人ぞ知る存在であった。

しかしながら2014年10月、楽天は「楽天モバイル」ブランドを打ち出し、音声通話も含めたスマートフォン向けの通信サービスに本格的に取り組むことを明らかにした。その後、楽天モバイルは、サッカーの本田圭佑選手を起用したテレビCM展開や、デュアルカメラを備えたファーウェイ製スマートフォン「honor6 Plus」の独占販売など端末ラインアップの充実、そして東京・銀座など主要都市へのショップ展開などを実施してきた。

楽天モバイルはこれまで、ファーウェイの「honor6 Plus」を独占販売するなど、加入者拡大に向けた独自の取り組みを積極的に進めてきた

これらの取り組みが功を奏し、楽天モバイルは幅広いユーザーからの認知を高めた。その結果、従来のMVNOの主要顧客であった、データ通信の利用が主体の30~40代男性だけでなく、ファミリー層や女性など、スマートフォンとセットで、メイン回線として契約する人達の獲得にも成功したのである。

さらに楽天モバイルの利用を拡大するきっかけを作ったのが、今年1月に提供された「5分かけ放題」である。これは楽天コミュニケーションズが提供する「楽天でんわ」の楽天モバイル契約者向けオプションサービスであり、月額850円を支払うことで、1回当たり5分間の通話が無料になるというもの。5分を超えた場合でも、30秒当たり10円という楽天でんわの料金が適用されるため、大手キャリアの5分間通話定額プランよりも安価に通話ができる。

今年1月よりサービスを開始した「5分かけ放題」は、楽天モバイルのユーザー拡大に向けた強力な武器となったようだ

これまでMVNOは、定額通話サービスを提供していない所が多いことから、音声通話を頻繁に使う人はお得にならないと言われてきた。だが楽天は、自社グループの資産を活用することで、5分間の制限はあるものの定額通話を実現。MVNOが抱える弱点を1つ解消したことで、メイン回線として利用するユーザーの一層の拡大に成功した。実際今年5月時点で、楽天モバイルの新規契約者のうち約8割が、音声通話対応のSIMを契約しているという。