シンプル・低価格で広いユーザー層に訴求
誰にでもわかりやすく、そして使いたいと思わせるには、何事もシンプルにすることが大切だ。Y!mobileではスマートフォンの複雑で高額な料金体系を、思い切って3種類にまでシンプルにしてみせた。
寺尾氏が「大盛り、中盛り、小盛り」と表現する「スマホプランS/M/L」は、パケット定額やインターネット利用料、1回10分以内の国内通話が月間300回まで無料になる通話無料サービスまでがパックとなった料金プランであり、オプションもタブレットなどを子回線として追加する際のシェアプランと、通話定額の拡張、端末の保証の3種類しかない。
このシンプルな料金体系を、2年縛りとはいえキャリアのほぼ半額となる月額2,980円から用意している。これにより、フィーチャーフォンからの乗り換えを促進し、Y!mobileで初めてスマートフォンを使うというユーザーは54%にも達しているという。
さらに、今年2月からは、2年縛りでスマホプランを1,000円ずつ割引き、最低月額1,980円で利用できる「ワンキュッパ割」をスタートし、価格面でも大きなインパクトを見せた。
競合他社でも1,980円プランなどに追随する動きがあるが、寺尾氏は「ベンチマークしていただいて光栄です」としつつ、「知名度を上げるためにも、常に先手を打たなければダメ。Y!mobileは知名度が低くて、知っているキャリア名を書いてくれと言っても、Y!mobileと書けるのは25%程度なんです」と謙虚に笑う。
インパクトの大きさといえば、iPhone 5sの取り扱いが始まったことも大きい。「偶然扱える機会が得られたので販売することにしました。2年前の端末ということで売れないのではという声もありましたが、中学校を卒業して高校に上がる世代、ここに売れるという自信はありました。高校に上がるのでスマホが欲しい、iPhoneが格好いい、だけどiPhoneは高い。そういったニーズを拾えると思いました」と自信を見せた。
思い切った料金設定とiPhone導入が功を奏してか、2015年12月から2016年4月までの前年度比販売台数は実に2.8倍と、大幅な増加を見せた。
この時期は、他キャリアが総務省タスクフォースによる提言の影響などで軒並み販売台数を下げていただけに、大躍進といってもいいだろう。寺尾氏は「ユーザーが価格に敏感になったという点では、総務省のおかげとも言える」と笑いつつ、総務省のタスクフォースについては、「ルールはいくら作ってもらっても構わない。その中でベストを尽くせるように考えますから」と豪語する。そして「クラスで10%がY!mobileに入らないかと期待しています。PHSの24時間話し放題を作った時、クラスで10%を超えると急激に普及が進みました。いいブランドとして認められれば、たちまち口コミで広がるんです」と目標を掲げた。