前述したとおり、AK JrとAK70はDACやソフトウェア、バランス接続対応の有無など相違点が多く、単純に後継機と見るべきではない。しかし、アンバランス出力という「DAPの基本の音」に変化はあるのだろうか。そう考え、個人所有するAK Jrと聴き比べることにした。試聴に用いたヘッドホンは開放型のSHURE「SRH1840」。リケーブルはしていない。
AK70の音は解像感に優れ、かつ低域の駆動力を感じさせるものだ。中高域方向でのヌケのよさは、同じDACをシングル構成で積むAK100IIと似た傾向だが、低域のドライブ感とソリッドさではAK70が一枚上手。ぐっと引き締まった印象で、輪郭が膨らみがちなウッドベースの音もクリアに描かれる。
その後でAK Jrを聴くと、やや薄味に感じられる。解像感はじゅうぶん高く、アンバランス接続ながら音の定位感もはっきりしているのだが、やはり低域の印象が異なる。特にバスドラのアタックは、音が沈み込む深さが違う。粒立ちよく透明感ある中高域という方向性は概ね共通しているが、いちどAK70を聴いたあとではエナジー感において差を感じてしまう。
もうひとつ、違いといえば「温度」だ。AK Jrではさほど気にならないが、AK70は再生開始から10分もすれば裏面が熱を帯びてくる。非接触型の温度計で測定してみたところ、もっとも温度の高い部分で37度近くに達した。採用されたSoC(型番は未公表)の特性だろうか、AK70のほうが体感温度は確実に上だ。ケースを装着すれば気にならなくなるのだろうが、UIがリッチになるなどシステムの負荷が増した第2世代機以降の宿命として、受け入れざるをえないところだろう。