ワイモバイルの背中を追うが戦略に焦りも
こうした経緯から、UQ mobileはKDDIが急拡大するMVNOに対抗し、低価格を求める層を押さえるための受け皿となるべく設立されたものの、苦戦が続いていたことが分かる。そこでKDDIが積極的に介入し、UQコミュニケーションズとの合併や、ぴったりプランの提供、そしてauとの販売連携など、大幅なテコ入れを進めてきたといえるだろう。
もう1つ、KDDIとUQコミュニケーションズが関係を強化するに至ったのには、ワイモバイルの存在も大きい。ワイモバイルはソフトバンクのサブブランドとして2014年8月より展開しているサービスだが、月額2,980円で1GBの高速データ通信と、10分間の無料通話が月当たり300回利用できる「スマホプランS」や、iPhone 5sの提供などが注目され、ここ最近急速に人気を高めている。
そしてぴったりプランなどのサービス内容を見れば分かる通り、UQ mobileはワイモバイルを非常に強く意識した戦略をとっている。UQコミュニケーションズはUQ mobileで、大手キャリアともMVNOとも異なる「第3極」を目指すとしているが、それはまさにワイモバイルが現在獲得しているポジションでもある。それだけにUQ mobileは今後、auのサブブランドに近い位置付けとなり、販売面を中心としてKDDIグループ同士での協力をより密にしていくものと考えられる。
ただ、KDDIはauブランドで、6月17日より新規・MNPでiPhone SEを購入し、「スーパーカケホ」と「データ定額1」を契約した人に対し、最大2年間、月額1,980円でサービスが利用できる「iPhone SE イチキュッパキャンペーン」を展開。UQ mobileだけでなくauブランドでも低価格層の取り込みを進めようとするなど、戦略の一貫性に欠ける様子も見せている。
それだけKDDIは、低価格層向け戦略で大きく出遅れており、なりふりを構っていられない状況だともいえる。だがソフトバンクがワイモバイルと明確にブランドを分け、高価格・高付加価値路線をとるソフトバンクブランドの価値を重視しているだけに、auとUQ mobileの双方で低価格層を獲得しようとするKDDIの戦略は、後々auブランドを毀損する可能性があるのが、やや気がかりな所だ。