KDDIのMVNOとなり、スマートフォン向け通信事業「UQ mobile」に力を入れているUQコミュニケーションズ。KDDIのグループ企業ながら、従来KDDIとはある程度距離を取り続けてきた同社が、最近では家電量販店でauと協力し、UQ mobileの販売を強化するなど、KDDIとの一体的な取り組みを進めるようになった。その理由はどこにあるのだろうか。
UQ mobileの販売でKDDIとUQが協力
UQコミュニケーションズといえば、WiMAX/WiMAX 2+方式を用いた、Wi-Fiルーターによるデータ通信サービス「UQ WiMAX」を提供する会社として知られている。そのUQコミュニケーションズが、最近力を入れているのが「UQ mobile」である。
UQ mobileは、同社がKDDI(au)のMVNOとなって展開している、SIMを用いたスマートフォン向け通信事業。最近増えているMVNO各社と基本的に同じ立ち位置ではあるが、UQコミュニケーションズはKDDIのグループ企業であることから、多くのMVNOが用いているNTTドコモの回線ではなく、KDDIの回線のみを使用しているのが最大の特徴となっていた。
だが最近、そのUQ mobileが、他のMVNOとは明確に異なる戦略を打ち出したことで、注目を集めるようになった。それが今年の2月より提供している「ぴったりプラン」だ。同プランは、基本料は月額2,980円、高速データ通信容量が1GBと他のMVNOと比べれば高いが、1,200円分(最大30分)の無料通話が可能であるなど、音声通話に重点を置いた料金プランである。
多くのMVNOは音声通話よりデータ通信に主軸を置き、価格を安くしているが、UQ mobileはあえて価格を上げながら、MVNOが苦手とする音声通話に力を入れたプランを提供している。そうした施策が、料金は安くしたいが音声通話も必要としている人達から注目を集める要因となり、従来のMVNOとは異なるユーザーを獲得してUQ mobileの人気を急速に高めているのだ。
そうしたことから、UQコミュニケーションズは6月23日、UQ mobileの事業を拡大するべく新たな施策を発表。7月から新規・MNPでの契約者に対し、基本料を13カ月間、1,000円値下げする「イチキュッパ割」を提供するなどさまざまな施策を打ち出したが、大きな驚きをもたらしたのは、家電量販店の販売でauと連携することにより、UQ mobileを取り扱う家電量販店を1000店に拡大するということだ。
先にも触れた通りUQコミュニケーションズはKDDIのグループ会社で、同社の元社長である田中孝司氏が現在KDDIの社長を務めていたり、auのスマートフォンでWiMAX 2+による通信が利用できるようにしていたりするなど、さまざまな面で協力関係にある。だが同社がWiMAX/WiMAX 2+で使用している2.5GHz帯を取得する際、3Gの通信事業を展開している事業者の出資は3分の1以下に制限するなどの条件が設けられた影響などもあって、従来は同じグループでありながらもauとやや距離を置き、独立色を打ち出す方針を取り続けてきた。
それがここに来て、auと一体での販売施策を打ち出すなど、auとの関係を急速に密にしようとしている。その理由は一体どこにあるのだろうか。