妊婦の失神は危険なため、ぜひとも脳貧血の予防法を知ってほしい

自律神経の乱れなどで立ちくらみや失神などの症状を起こす脳貧血。一見すると症状自体に危険性は少なさそうだが、昏倒した場所によっては命を落とす可能性もあるため、日ごろからの予防策が肝要となる。

そこで今回は、高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師に脳貧血になりやすい人や予防策などについて伺った。

女性、特に妊婦は日ごろから注意を

脳貧血は、脳に十分な血液量が行き届かず、一時的に脳が血液不足に陥ることによって引き起こされる。その発症メカニズムや症状自体も、通常の貧血とは全く異なるものだ。症状には立ちくらみやめまい、頭痛、ふらつきなどがあるが、場合によっては失神を伴う。

原因としては、脱水などによる体液量の減少や神経疾患などが原因で立ち上がった直後に起こる「起立性低血圧」、血管系の機能がうまく調節できなくなり長時間の起立、精神的興奮などのきっかけの後に生じる「神経調節性失神」、不整脈などの「心臓の病気による失神」などがある。

これらの原因を見る限り、誰にでも起こりうると言えそうだが、特に脳貧血を注意してほしい人たちがいると福島医師は解説する。

「女性は生理時に出血をして体内の血液量が減る分、脳へと戻っていく血液量も少なくなります。そのため、生理の前後は脳貧血や立ちくらみを起こしやすいです。さらに妊娠・出産や過度のダイエットなどにより、女性は脳貧血を起こしやすい条件を多く抱えています」。

女性の中でも、妊婦はさらに脳貧血リスクが高まる。妊娠すると、胎盤から胎児を育てるために大量のホルモンが分泌される。それに伴い血管が拡張して低血圧になり、脳貧血を招きやすい。

「おなかの中にもう一人の生命が宿っているわけですから、その分だけ体内を循環する血液量は多くないといけません。逆にちょっとした脱水でも、すぐに血圧が下がってしまいます。さらに、足の静脈血は心臓に戻るのですが、子宮が大きくなると少なからず静脈が圧迫されます。すると下肢に血液が鬱滞(うったい: 血流などが静脈内などに停滞した状態)し、血栓ができやすいというリスクも出てきます」。

万一に備えて知っておきたい「ヘッドアップティルト」

女性のほかになりやすい人の特徴として「生活が不規則」が挙げられる。「やせ型」「ストレスフルな日常を送っている」「睡眠不足に悩んでいる」「3食をきちんと食べていない」などの項目のうち、複数に該当する人は気をつけたほうがよい。さらに元来、低血圧気味の人も脳貧血になりやすい。

妊娠中の女性などで突然の脳貧血が怖ければ、場合によっては「ヘッドアップティルト」と呼ばれる試験を受けるのもお勧めだ。

同試験は失神の原因を調べるための検査の一つ。リクライニングシートのように傾斜をつけることができる検査台に横になり、寝ている状態と立った状態における血圧差を調べ、失神の兆候がないかを調べるテストだ。検査は1時間程度ですむケースが多く、勤め人ならば午前休などを活用して検査可能だろう。