こうして5大メガブランドを列挙すると気づくのが、「PARM(パルム)」と「スーパーカップ」以外が“昭和生まれ”の製品であること。5大メガブランド以外にもロッテの「雪見だいふく」やグリコの「ジャイアントコーン」や「パナップ」といった、市場で強い存在感を示す製品はだいたい昭和生まれだ。

こうした昭和生まれのブランドがマーケットで長く支持されているおもな理由が「先行優位性」だろう。長い期間積み上げてきた強いブランド力に裏打ちされ、現在でもこうした製品の人気は衰えない。

親が子どもに「味」を伝える

また蓮沼氏は“ライフサイクル”が関係しているという。たとえば「ピノ」の場合、「子どもの頃おやつとして家族で分け合う」→「10代後半から20代に成長していくと、ピノは“こどもっぽい”“新しい味を試したい”という理由で客が離れていく」→「子育て世代になり、“昔のあの味”を自分の子どもにも味合わせたいと回帰する」というサイクルだ。当然、親に「ピノ」を食べさせてもらった現在の子どももこれが原体験となり、将来、自分の子どもに「ピノ」を与える可能性が高くなる。

おそらくこうしたサイクルは、「ピノ」に限らずロングセラーを続けているほかのアイスでも生じているのではないか。

さらに蓮沼氏は、「時代に合った味のリニューアル」がロングセラーの秘密だとしている。「ピノの場合、長年みなさまに支持をいただいておりますが、時代背景に応じて味やパッケージ、マーケティングに至るまでリニューアルしています。これは弊社だけでなく、他社のロングセラー商品でも必ずおこなっていることだと思います。老舗アイスブランドが市場を引っ張るのは、各メーカーの努力のたまものといえるでしょう」と、成熟したアイスブランドが人気を失わない理由のひとつを語る。

時代に合ったテイストにリニューアルされるピノ。マンゴー&パッションフルーツ味や抹茶味といった「多テイスト」戦略も展開される

冒頭で、筆者はウン十年前のピノと比べると今のピノのほうが“濃厚になった”と明記したが、この度重なるリニューアルによるものだったのか、と気づかされた。

さて、文中に出てきた昭和生まれのアイス達だが、ザッとその年齢を挙げてみよう。「ジャイアントコーン」は前身の「グリコーン」時代を含めると53歳、「ピノ」は切りがよくちょうど今年で40歳、「パナップ」は38歳、「雪見だいふく」は36歳、今年の春、価格改定で話題になった「ガリガリ君」が35歳だ。みな、まさに“立派な中年”。いよいよ夏本番を迎えるにあたって、この中年達の人気がますます上がっていくことだろう。