およそ“ウン十年”ぶりに、森永乳業のアイス「ピノ」を口にした。チョコレートでコーティングされたバニラが、一口大の“円錐台”に形成されている点は昔とまったく変わりがなかったが、味がずいぶんと濃厚になったなと思った。筆者の記憶の中にある「ピノ」は、チョコがパリッとしていて、その外殻を割ってチョコとバニラを堪能するイメージだった。だが、今の「ピノ」はチョコとバニラが同時に口溶けするような滑らかさだ。

温暖化だけが「アイス好調」の理由ではない

森永乳業 第一営業本部 冷菓事業部 冷菓マーケティンググループ 蓮沼裕二氏

アイスクリーム市場が堅調だ。日本アイスクリーム協会の調べによると、2005年に3,533億円だったアイスクリーム市場は年々伸び続け、2014年には4,369億円まで成長し過去最高を続伸。気象庁によると、今年の夏は暑くなるそうなので、2016年も市場規模が伸びることが予想される。

「確かに温暖化による気温上昇がアイスの売れ行き押し上げたのは確かでしょう」。そう前置きした上で、「ピノ」を担当する森永乳業 冷菓マーケティンググループの蓮沼裕二氏は「単に“涼”を得るだけの存在ではなく、暮らしの中に浸透しているのが好調な要因です」と分析する。「お風呂上がりに」「オフィスでのちょっとした休憩に」「ランチの締めに」といったシーンで、“リラックス”をより一層感じるためにアイスが食べられているのだそうだ。

特に同社の「ピノ」や「PARM(パルム)」は、夏場に売り上げが最大化するのは確かだが、秋や冬になっても、ほかの氷菓に比べ落ち込みは少ないという。ピノを冷蔵庫に買い置きしているというユーザーは、「ピノはコタツで本を読みながらピックで刺して食べるもの」とのイメージを持っているのだそうだ。

このアイス市場は“もっとも新陳代謝が少ない”マーケットのひとつといえるだろう。業界では100億円以上の売り上げているブランドを「メガブランド」と呼ぶ。中でも以下の製品が“5大メガブランド”とくくられることが多い。森永乳業の「ピノ」と「PARM(パルム)」、森永製菓の「チョコモナカジャンボ」、明治の「エッセル スーパーカップ」、赤城乳業の「ガリガリ君」だ。

蓮沼氏は「具体的な数字はいえませんが、ピノもパルムも100億円以上売り上げていることは確かです」と太鼓判を押す。