――子ども向けではない、大人に向けた「仮面ライダー」という部分をどのように受け止められましたか。

まだ最初の時に、白倉(伸一郎)プロデューサーから「『仮面ライダー』だからって思って芝居を作らないでください」って言われたことが心に残っているんです。ヒーローだとかライダーだとか考えずに、一人の人間を命がけで作っていけばそれでいいので、思い切りやってくれと。ありがたい言葉だと思いましたね。

感想をいただく中に、「これは子どもに見せられない」という意見が多くあるんですよ。でも、『アマゾンズ』のテーマは普遍的な「"生きる"ってどういうことなんだろう」「人間が生きる意味とは?」みたいなところがあるんです。例えば、ライオンが草食動物を捕食するって映像を子どもに見せるのかどうか、なんてことと本質的に同じなんじゃないかなって思うんです。子どもには残酷だから見せないという考え方もあるし、これは我々が生きていく上で見ておかなくちゃいけないことだという考え方もありますよね。

――仁、悠、そして駆除班メンバーたちは毎回のように生死をかけた戦いを行うので、誰かがどこかの回で死んでしまうのではないかと心配してしまうような展開ですが、これについてはどう思われますか。

毎回台本をもらうのが、これほどドキドキする作品はなかったですね。第1話から駆除班の中で大変なことが起こりますしね。この先どこかで死んでしまうか、僕にしても、駆除班の連中にしても、わからないわけですから。でもそういう展開だからこそ刺激的で、とても面白い撮影でした。

――凄絶そのものの仁の生活の中で、七羽と接する時だけは安らぎを感じられます。ああいった大人の男女のリアルな生活感というのも、「仮面ライダー」らしからぬ異例さですね。

仁はああいう風な男ですけれど、「アマゾン」なので人を襲って食うかもしれないんです。そんなヤツが、女を作って一緒に暮らしているというのは、すごいことなんですよ。仁と七羽は普通に日常を過ごしていますが、よくよく考えてみればとても特殊な環境なんですね。いつ食われるかわからないような状態で、日常的に笑っていられるって、どういうことなんだって。七羽と過ごしている何気ないシーンでは、そんなことを常に意識しながら演じています。

――悠や仁が変身した「アマゾン」と、覚醒した「アマゾン」との戦いの描写も生々しく、まさに野獣同士の殺し合いのような緊張感があります。

「仮面ライダー」をあらためて描くにあたって、ただ変身してライダーが怪人と戦うだけではなく、変身に至るまでのドラマをじっくり見せていきたいというのが、『アマゾンズ』の狙いだと思います。そして、変身後の戦いも、殴られれば痛いし、傷つけば血も出る。リアルに考えればそうなっていきますよね。そこがいいっていう人と、やりすぎだって人もいるでしょうけれど、どちらにも対応しようとすると中途半端になりますし、新しい扉は開けないと思うんです。

――最後に、鷹山仁という役柄および『仮面ライダーアマゾンズ』という作品全体についての感想をお願いします。また『アマゾンズ』がこのたび地上波、BSでも放送されることについて、ひと言お願いします。

鷹山仁という役に出逢えたことは、自分にとってとても幸福だったと思います。すでに撮影はすべて終了したのですが、いまだに心の中には鷹山仁が色濃く残っています。大げさじゃなく命がけで演じたつもりです。現場の空気がすごくよくて、監督はじめスタッフがみんな笑顔で、好きなもの、やりたいものをみんなで作っているんだなあと実感できました。

今度は地上波でも放送されるということですので、より多くの人に『アマゾンズ』を観ていただけると思うと、とてもうれしいです。撮影している間は、この描写とか芝居とか、地上波ではダメなんじゃないか?みたいなことを考えず、配信をご覧になる方に最高のものをお届けしようと演じてきました。

第1話なんか力が入りすぎて、まさかの40分越えでしたからね(笑)。あれが地上波放送になって30分に編集されたら、「仁の出番なくなるんじゃないの」って心配してしまいますけど、僕たちも地上波放送を楽しみにしています。撮影から日数も経って、かなり落ち着いて作品に向き合えるんじゃないかと思いますし、みなさんの感想などもしっかりと受け止めたいですね。どうぞよろしくお願いします。

特撮ドラマ『仮面ライダーアマゾンズ』は、BS朝日が7月3日スタートで毎週日曜25時~25時30分、TOKYO MXは7月6日スタートで、毎週水曜22時30分~23時。各話30分、全13話でオンエアされる。

■プロフィール
谷口賢志(たにぐちまさし)
1977年生まれ。東京都出身。
『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(1999年)ゴーブルー/巽流水(ナガレ)役でデビュー。 演劇ユニット「ハイブリッド アミューズメント ショウ bpm」のメンバーとして活動。 『舞台 戦国BASARAシリーズ』明智光秀/天海役、『VISUALIVE ペルソナ4』堂島遼太郎役など。

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