「AlphaGo」などAI開発を積極化するグーグル
今回のGoogle I/Oでは、AIを前面に押し出したプロダクトが満載であったが、グーグルは以前よりAIの開発に積極的に取り組んでおり、既にいくつかのAIを公開している。中でも最近注目された事例として挙げられるのは「AlphaGo」であろう。
これは、グーグルが買収して子会社にしたGoogle DeepMindが開発した囲碁プログラム。囲碁はチェスなどと比べ、長い間プログラムが人間に勝つのが困難とされてきた。だがAlphaGoは1202のCPUと176のGPUを備え、AI技術を活用して学習を進めることにより、非常に強力な囲碁プログラムへと成長。今年3月に世界トップクラスの実力を持つイ・セドル九段と対戦し、3勝して破ったことから大きな話題となった。
またグーグルは、開発したAIをオープンソースとして公開する取り組みも進めている。実際、同社が開発したAIライブラリ「TensorFlow」はオープンソースとして公開されており、誰でも利活用できるようになっている。
AIをオープンソースで公開することが、グーグルのメリットがあるのか? と思われるかもしれない。だがディープラーニング(深層学習)を主体とした現在のAIにおいては、学習する仕組みの構築よりも、学習のさせ方や学習したデータの方が重要となってくる。それだけに、AIの仕組み自体を公開することはグーグルのデメリットにはならないだろうし、Androidのようにオープンソースで利用が広まることで、多くの人が自社のAIを利用し、事実上標準の座を獲得することが、将来的なメリットにもつながってくる可能性は高いだろう。
AIの利用拡大を進めるための基礎を固めることも、グーグルは怠っていない。実際グーグルは、AI専用のチップセット「Tensor Processing Unit」(TPU)を開発していることを、今回のGoogle I/Oで発表している。これはディープラーニングをより高速に処理するために作られた専用のアクセラレーターで、AlphaGoにもこのTPUが用いられているとのこと。ハードを開発するメーカーではないグーグルが、専用のチップセットを開発するという点からもAIに対する力の入り具合を見て取ることができる。