動態保存の対象はSL急行やトーマス号だけではない。定期的に運行している普通電車もその対象といえるだろう。鉄道ファンや地元住民ならご存じだろうが、普通列車も退役した車両を全国から調達し、大井川鐵道で運用している。それらの製造年代も昭和中期と、非常に年季の入ったものである。
恥ずかしながら筆者はあまり鉄道に造詣はない。そのため今回導入された客車を撮影しに行くため金谷駅を訪れた際、停車していた古い車両をみて、「まだこんな電車が走っているのか」と、驚きとともにノスタルジックな感傷がわき起こった。また、首都圏の鉄道の場合、路線ごとに一貫性のあるデザインの車両が走るが、大井川鐵道では各車両の個性がそのまま残る。行きと帰りでまったく異なる車両に乗車でき、ワクワク感も得られた。
左:東急電鉄、十和田鉄道をわたり歩いた「7200系」(昭和43年製造)。中:南海電鉄から導入した「21000系」(昭和33年製造)。右:大阪セメント伊吹工場からきた電気機関車「いぶき501」(昭和31年製造) |
余談だが、大井川鐵道は定期外運行以外の柱として“物販”に注力している。新金谷駅横にある「プラザロコ」内に駅弁やオリジナルグッズが並べられ、人だかりができていた。当日は“トーマス号初日”ということもあったが、中国語が飛び交うなど、インバウンド観光客の姿も数多く見られた。
2011年に発生した東日本大震災の影響で、大井川鐵道を訪れる観光客が激減した。2012年に発生した関越自動車道での観光バス事故で、長距離バスの規制が強化され、バス事業も手がける同社の収益に大きな影響が出た。3期連続の赤字で一時は破綻すらささやかれた大井川鐵道だが、着実に回復しているようだ。24年ぶりの客車購入は、その表れともいえる。
そうそう、冒頭で紹介した今年初のトーマス号の発車シーンだが、動画撮影したので、ご興味あるならご覧いただきたい。
2016年6月11日、トーマス号発車の様子 |