課題山積するLINE
まず、LINEが様々な乗り出した事業領域には数多くのライバルが存在する。音楽サービスをひとつとっても、Apple Music、Google Play Music、AWAなど他社が手がける定額制音楽サービスがあり、競合は多い。そのためか、フードデリバリーサービスの「LINE WOW」、CtoCのフリーマーケットサービス「LINE MALL」など終了したものもある。
LINE経済圏の原動力となるユーザー数についても不安要素は残る。メッセージ系アプリは広告が主な収益源となり、ある国や地域での利用者数をいかに獲得できるかが重要になる。ナンバーワンになることが重要で、次点以下のアプリはビジネス的な展開において不利になってしまう。
国内のLINEの登録ユーザー数は5000万人以上おり、磐石ともいえる状況だが、メインの利用者となる20代から30代には普及済みといえ、開拓余地はそれほど大きくない。
海外に目を向けてもハードルは高そうだ。LINEは世界全体で約2億1840万人のユーザーを擁するが、日本、タイ、台湾、インドネシアで約1億5160万人と、全体の約7割を占める。そして、足元のユーザー数の伸びが鈍化しているのも気になるところだ。これまで、これらのエリアに集中的なマーケティングを行ってきたという経緯があるものの、上記以外においては優位な立場に立てていないのが現状だ。
海外には競合アプリがひしめく。その代表格が、Facebookおよびその傘下企業のアプリ群である。Facebookは16億5000万(2016年4月時点)、WhatsAppは10億(2016年2月時点)、Messsengerは9億(2016年4月時点)、Instagamは4億(2015年9月時点)のユーザーを擁する。
このほか、SNSという括りでは、TwitterやSnapchatなどサービスがあり、GoogleもAI機能を搭載したチャットアプリの「Allo」を今夏に公開を予定している。人口世界一の中国においても、約7億6000万人(2015年11月公表)のユーザーを擁し、中国版LINEと呼ばれる「WeChat」などがあり、地場に根付いたサービスが存在している。
今回のLINEの株式上場は、市場における優位性を確保した日本、タイ、台湾、インドネシアでの基盤の強化としては意味を持つだろう。しかし、これらのエリア以外の世界展開においては、海外には強大なライバルが多数存在し、そこに割ってはいるのは容易ではない。LINEがさらなる海外展開を図るにあたって、これらのアプリが根付いた国・地域で真っ向から勝負を挑むのか、今後スマートフォン全盛期を迎えるようなエリアに絞るのか。まずは、LINEがどこで勝負をかけるのかが注目されそうだ。