6月1日、HTC NIPPONはメディア関係者向けに、新製品「HTC 10 HTV32」の製品発表会を開催した。発表会後に、同社社長の玉野浩氏へインタビューする機会を得たので、HTC 10の魅力や、HTCの今後の商品戦略などについてお話を伺った。
HTCらしい総合力の高さがHTC 10の魅力
――HTCといえばワールドワイドでは高いシェアを持ちますが、日本ではまだそれほど知名度が高いとはいえません。HTCの特徴はどんなところだとお考えですか?
玉野社長 世界初のAndroid端末「HTC Dream」はHTCがGoogleと一緒に開発したという経緯があり、以来Googleとも綿密な関係を保っています。日本では台湾のメーカーというとASUSさんが有名ですが、世界的には弊社のほうが高いシェアを占めていますし、製品のクオリティやチップセットの使い熟しといった面でも負けていないと自負しています。
HTCのスマートフォンは、ハードウェア的にはメタルユニボディが特徴で、これには4年前からずっと取り組んでいます。昨年「HTC A9」をリリースした時はiPhone 6の真似だと言われてしまいましたが、真似ではなく、iPhoneより先にメタルユニボディを進めてきたのです。HTC 10でもマット仕上げの部分と光沢仕上げの部分が共存するデザインを採用しており、これは工数的にも手間がかかるのですが、それを実現してなおかつ量産できる、そういう高い生産技術を持っているのがHTCです。
新製品を出すときには、必ず新しい機能や基軸をいくつか入れてくるというのも特徴です。音やカメラに対するこだわりも他社に負けていません。突出してどこかひとつの要素がすぐれているというわけではありませんが、真面目でチャレンジ好きで総合力が高い、それがHTCという会社や、HTC製品の特徴だと言えると思います。
――新製品のHTC 10を実際に触ってみましたが、確かにボタン類などの精度も高く、手にしっくりときて持ちやすい端末だと感じました。高性能なのにシンプルな感じがいいですね。
玉野社長 端末の開発には1年ほどかけていますが、その間に昨年日本に導入したHTC Butterfly 3、M9、A9などのフィードバックがありました。また、同時に市場の動向も変わってきています。実はワールドワイドでiOSが盛り返してきているのです。これはなぜかと調査したところ、Androidは自由度が高いのが特徴ですが、自由度が高すぎて、同じ端末でもキャリアごとにインタフェースが違ったり、アプリが違ったりと、ユーザー体験のフラグメンテーションが大きすぎるという結論に達しました。同じようなアプリがたくさん入っていると、初心者やリテラシーの低いユーザーにはどれを使っていいかわからず、混乱させてしまうのです。
では思い切ってAndroidをシンプルにしよう、という動きがありまして、HTCもGoogleと話し合いを進めてきました。このあたりは初のAndroid端末以来協力してきたという信頼関係が功を奏したとおもいます。本当は競合他社やキャリアも含めてもっと協力が必要なのですが、今回は時間もないので、HTCとGoogleの間では、重複する機能のアプリはどちらかすぐれた方だけを搭載しよう、という取り決めになっています。特に電話、メール、メディアプレーヤーなどが対象です。
この結果、搭載アプリはシンプルになりましたから、音楽を聴くならメディアプレーヤー、電話をかけるなら電話、とシンプルな操作系になりました。さらにメモリスペースが空いて端末の動作そのものがキビキビと快適になっています。キャリアのアプリについてはauさんともお話をしていて、総論としては賛成いただいているのですが、サービスとの兼ね合いもあるので、単純に減らすのはなかなか難しいところです。