オカムラが開発した「思考」のためのデスク&チェア
ここからは、両社のショールームの様子を紹介していく。
まずはホテルニューオータニ(千代田区・紀尾井町)内にかまえるガーデンコートショールーム。展示製品の中で特に印象的だったのは、独特の「低座・後傾」という姿勢を提案する「Cruise & Atlas」というもの。一般的なオフィスチェアより低い位置で座り、体を後ろに傾けた状態で仕事をする。その姿勢で快適な入力を行うために、セットで天板の角度調整が可能なデスクとセットで使う想定だ。
実際に座ってみると、体が非常にリラックスした状態でタイピングが可能となっていて、普段の座り方では無意識にどこかしら力みが生じていたのを発見した。身体への負担減という意味では非常に効果的で、作業だけに集中できると感じた。天井の照明を遮るスクリーンや同素材のパーテーション、デュアルディスプレイにも対応するアームなど、個々人で集中して作業を行う現場での導入を想定したラインナップ展開となっている。
このショールームには、同じイスでも座面の素材や背もたれの高さ、ヘッドレストの有無などのバリエーションが取りそろえられていて、自分に合っているかどうか試すことができるようになっている。たとえば、筆者であれば「バロン」が一番体にフィットしたように感じたが、ヘッドレストは身長の関係であまりうまくフィットせず、ハイバック(高めの背もたれ)が一番安定した。
同ショールームは予約なしで見学可能だが、イスに関する説明を受けたいということであれば、事前に予約をしたほうがよいだろう。心ゆくまで自分の一脚を探すことができる空間となっていた。
イトーキが提案する姿勢の変化に合わせるチェア
イトーキの東京ショールームは築地にある。フロア別にシーンの異なるオフィス家具を配置しているが、オフィス家具のフロアでは、チェアが弧を描くように並べられてその存在感を放っていた。
同社のチェアは前述の通り、座って体重をかけると背もたれが動いて体に寄り添う機構など、種類ごとに異なる特徴を備えている。中でも、担当者イチオシだったのは、今年発売されたばかりの「フリップフラップチェア」。ユーザーの体重にあわせ、座るだけで背もたれの位置やロッキングの強弱が調整されるもので、集中した作業から息抜きまで体をサポートするという。
このほか、女性のために作られたオフィスチェアとして話題となった「カシコチェア」や、背もたれを倒しても画面と目の距離がほぼ変化しない機構を採用した「ノナチェア」など、ユニークで利用者ニーズを考慮した製品がずらりと並んでいた。個人的には、デザインが洗練されていて、コンパクトで腰のサポートが得られる「ノナチェア」が気になった。なお、同ショールームは予約制のため、Webサイトより手続きを行う必要がある。
体をイスに預けてみる
2社のショールームを回ってみて、どんなチェアを使うにしても、まずは深く腰掛け、体をイスに預けるのが大切だということが分かった。会社から割り当てられたモノではなかなか愛着もわきにくいが、オフィスチェアはやはり一般的な家具のそれよりも、長時間の作業に向けて工夫した機構を備えている。
そこでまず、使っているオフィスチェアをまずは自分にあわせて調整してみると、思った以上に疲労が改善されるかもしれない。また、自分のためのイスが導入できる状況ならば、こうしたショールームや家具店など実際に座れる場所で「自分だけの一脚」を探してみると、これまで以上に仕事や制作に集中できることだろう。