東京「銀座」は銀貨を鋳造した施設があったことからその名がついた。一方、銀座があるのだから金貨を鋳造した「金座」も当然にあった。だが、金座のあった場所には日本銀行が建てられ、金座という地名は定着しなかった。貨幣鋳造の機能を失いながらも地名として残った銀座……貨幣発行を司る国の中央銀行が存在しながらも地名にならなかった金座。両者を比べると、何か感慨深いものがある。そして、その金座のあった場所一帯は“日本橋”と呼ばれている。
一般社団法人「LINK-J」を立ち上げた三井不動産
この日本橋の再開発を強力に推し進めているのが三井不動産だ。日本橋三井タワーやコレド日本橋、コレド室町などの再開発を手がけ、日本橋の様相を大きく変化させている。それもそのはず、日本橋・室町は三井グループの前身である呉服店「三井越後屋」があった場所で、いわば創業地ともいえる土地。越後屋のあった場所には現在、三井本館がかまえ、三井グループの象徴として認識されている。
そんな日本橋を「ライフサイエンス」の中心地にという構想がスタートした。これは、日本橋を医療や健康に関わる新産業が育成できる街にしようという取り組みで、三井不動産やアカデミア有志が中心となり、一般社団法人「ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン」(LINK-J)を設立した。
医療や健康に関わる新産業の育成と前述したが、同財団が考える対象産業の幅は広範だ。医学をはじめ理学、工学、ICT、人工知能といった新たなテクノロジー分野において、人的交流・技術交流を促すのがLINK-Jの役割としている。
LINK-Jの理事長には慶應義塾大学医学部長 岡野栄之氏が就き、副理事長には大阪大学大学院医学系研究科長 澤芳樹氏が就任する。三井不動産 常務執行役員 植田俊氏が理事を務め、そのほか特別委員には、理化学研究所 理事 松本洋一郎氏や京都大学 iPS細胞研究所 所長 山中伸弥氏などが名を連ねる。まさに“産官学”が一堂に会した陣容だ。