「鉄鍋で鉄分摂取」の破壊力
鉄を補充するにあたり、最も効率的なのは動物性たんぱく質だ。鉄分の宝庫として知られるレバーをはじめ、豚肉や牛肉、鶏肉などの日常的に口にする肉類(特に赤身)にも、吸収率のよいヘム鉄が多く含まれている。肉が苦手な人はイワシやカツオ、マグロ、シャケなどの魚類、あるいはアサリや赤貝、カキといった貝類から摂取するのもお勧め。
野菜や海藻類では、昔からひじきやほうれん草の根茎に多く存在するといわれてきた。だがこれらの鉄分は、実は調理器具によって大幅に摂取量が変わるということが最近明らかになっているのをご存じだろうか。
例えば、ひじきは鉄鍋で調理した場合は58.2mg(100gあたり)の鉄分が含まれるが、ステンレス鍋を使うと同6.2mgまで激減してしまうのだとか(「日本食品標準成分表」参照)。ここまで鉄分量が変わってくるのなら、鉄鍋を常備しておきたくなるだろう。
色白な人は要注意? 隠れ貧血にもご用心
鉄欠乏性貧血は、大出血などの特別な事情がない限り、徐々に進行していく。そのため、貧血になっていたとしても、本人の自覚症状が乏しいケースも多々ある。
「何か別の病気で診察を受けたときに、眼瞼結膜の血行を見て貧血を疑い、検査したらとんでもない貧血だった、などということはよくあります」と井上特任教授。
ちょっとした息切れや動悸(どうき)、軽いめまいや立ちくらみなど、どれかひとつでも思い当たる症状があったら注意が必要となる。
さらに、近年よく耳にするようになった「隠れ貧血」はもっと軽症で、「色白でうらやましい」と言われるほど症状がわかりにくいとされている。この隠れ貧血の進行を知るには、血中の「フェリチン」というたんぱく質の検査をすると、鉄の不足量がわかるとのこと。気になる人は、一度検査を受けてみてもいいかもしれない。
どんどん暑さが増していくこれからの季節は、夏バテなどで栄養バランスが崩れがち。体の内も外も健康的な美しさをキープするために、スキンケアと同じくらい鉄分摂取も意識してみてほしい。