「毎日欠かさず全身保湿しているのにかゆみが治まらない」「寝ている間に何度も引っかき傷を作ってしまった」など、原因不明のかゆみに悩まされた経験はないだろうか。
かゆみの原因で最も多いのは「乾燥」だ。ただ、「保湿ケア」「ビタミン剤などの摂取」「十分な睡眠」などのあらゆる対策を講じても症状がよくならない場合は、乾燥以外の原因を疑ってみる必要があるかもしれない。
かゆみの原因は「アレルギー」「肌のバリアー機能の低下」「入浴前後などの温度変化」など、実に多岐にわたる。一方で、内科系病態が絡んでいることもある。その場合はいくら表面的なケアをしても改善されないため、一度病院で診てもらったほうがいいだろう。
今回は、かゆみの原因として見逃されやすいものの、意外と多くの人を悩ませている「鉄分不足」について聖マリアンナ医科大学の井上肇特任教授に話を伺った。
鉄分不足が引き起こす症状
体から鉄分が不足すると、めまいなどの貧血症状に加えて、人によっては「全身掻痒(そうよう)症」、すなわちかゆみをきたす場合がある。その原因は実はよく分かっていないのだが、症状としては確かに存在するという。
さらにショックなことに、鉄の不足は肌のハリを維持するコラーゲンやエラスチンといった結合組織の代謝にも大きく影響する。鉄分を摂取しないことが、知らず知らずのうちに肌老化に拍車をかけていた……なんてことにもなりかねないのだ。