科学技術振興機構(JST)は6月1日、内閣府主導の国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の課題のひとつである「革新的燃焼技術」に関する説明会を、神奈川県横浜市にある小野測器テクニカルセンターにて開催した。
近年、自動車の電動化に関する研究開発が積極的に進められている印象があるが、実は30年後も世界の自動車の半数以上は、内燃機関を使用するものと考えられている。このため、二酸化炭素排出量と石油消費量を削減するために、内燃機関の熱効率向上を図っていく必要がある。
この課題に対し、2014年度から実施されているSIP「革新的燃焼技術」では、最大熱効率50%を実現するため、「ガソリン燃焼チーム」「ディーゼル燃焼チーム」「損失低減チーム」「制御チーム」の約80大学からなる4チームが連携しながら、研究開発を進めている。
内閣府総合科学技術・イノベーション会議常勤議員 久間和生氏は、説明会冒頭でSIPについて「我が国の産業と社会にとって成功させなければならない重点課題。現在、11課題を推進しているが、各課題ともプログラムディレクターのリーダーシップのもと、基礎研究から事業化までを一気通貫で行うことを目的としている。基盤技術の蓄積や人材育成は当たり前。研究成果の実用化、新事業の創出が必須である」と説明。
特に、「革新的燃焼技術」は年間約20億円、5年間で約100億円の予算が配分されている。久間氏は、「この開発投資予算に見合った利益を期待している。また、4つの研究拠点を、プログラム終了後にどう持続・発展させていくかについても検討してほしい」と関係者らを激励した。
同プログラムでは、過去40年間かけて10%ほど向上した熱効率を、5年間でさらに10%引き上げなければならない。この目標を達成するにあたっては多くの課題がある。そこで同プログラムでは、自動車会社9社と2団体からなる「自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)」と連携協定を組むことにより、「産産学学連携体制の構築」を目標に掲げ、早稲田大学西早稲田キャンパスおよび東京大学本郷キャンパス、堀場製作所本社工場、小野測器テクニカルセンターの4カ所のオープンラボを拠点に、研究開発を進めている。
この4カ所の研究拠点について、同プログラムディレクターのトヨタ自動車 常務理事 杉山雅則氏は、「エンジンは高価で安全性の問題もあるが、4つのオープンラボでは最新のものを安全に使うことができる。またデータの共通化がなされているため、産学が持ち寄って議論することも可能。また、人材育成、異分野ネットワーキングを行うことで次の共同研究に繋がるという循環を生み出せる源泉ができた」と説明した。