「記載」勧告後の国立西洋美術館は
5月21日、東京上野。上野駅公園口付近には、観光バスが何台も連なり、地方からの団体客が続々とバスから降りてくる。駅の改札に目を向けてみると休日とあって家族連れや、ここのところ増加している外国人観光客の姿が見られた。休日の上野は人が多い。それは毎度のことだが、この休日は特に人が多いように思えた。あまり目立たないが、園内には以前から「国立西洋美術館を世界遺産に」というのぼりが置かれている。この日行ってみると、のぼりは「国立西洋美術館 世界遺産『登録』勧告」に変わっていた。
国立西洋美術館は、公園口から入ってすぐのところにある。勧告翌日にも訪れたが、入り口前に来ると、門の外から建物の写真を撮っている人が何人もいて、中に入る人の列もできていた。
「ハコモノ」をどうみせるかという課題。その答えは
世界遺産の効果はあるか。美術館の担当者に話を聞くと「カラバッジョ展が好評なのです。勧告前から来場者の数が増えていっています。列ができているのは、チケット売り場が3列しかないからですね。それと、都立美術館で開催されている若冲展が何時間待ちという状態なので、代わりにカラバッジョ展に行こうかと来られる方もいるみたいです」とのことだった。現在のところ、館内の常設展入り口前に「建築探検マップ」と書かれた国立西洋美術館のパンフレットが置かれているほか、常設展の一部でパネル展示をしているのみだという。「ここは博物館なので、展示物がメインですから」と担当者。「上野に来る目的が1つ増えれば」と周りの施設との連携を考えているという。「ハコモノをどう見せるかが課題」(美術館担当者)。元々観光地であること、“展示物が主役”の美術館ならではといえる。ある意味、静かな世界遺産になりそうだ。だか、それだけでは終わらないのが上野だ。
ちなみに、登録の可否が決まる前の7月9日から(9月19日まで)「ル・コルビュジエと無限成長美術館―その理念を知ろう」と題した展示が行われる。「無限成長美術館」といわれても、正直よくわからないだろう。その理念や、国立西洋美術館でどのように表現されているかといったことを、CGや写真などを使って説明するという。