有名な2作品も展示

今回のイベントでは、米国テキサス州で毎年開催される世界的なデジタル・クリエイティブの大型イベント「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」で注目を集めた、海外でも有名な2作品も展示されていた。

そのひとつ「POSTIE」は、スマートフォンに手書きしたメッセージを相手に手紙として届けられるIoTデバイス。写真やスタンプも送れる。手紙よりも早く、メールよりもハートフルなやりとりを実現する。

「POSTIE」からは、スマートフォンに手書きしたメッセージが印刷されて出てくる

もうひとつの「トーカブル・ベジタブル」は、箱の上に置かれた野菜に触れることで、野菜が生産者の声でしゃべりはじめるというもの。店頭でのプロモーションツールとして利用できる。「第18回 アジア太平洋広告祭」の2部門を受賞している。会場のデモ機は、じゃがいもが「マッシュポテトにして食べるのが、一番おいしいです」などと自己紹介していた。

箱の上に置かれた野菜に触れることで、野菜が生産者の声でしゃべりはじめる「トーカブル・ベジタブル」

数々の意欲作

ほかにも、数々の意欲作が展示されていた。

「次世代の漫画 I」は、スマートフォンの特性を生かした短編漫画作品。漫画「マンボウの書」では、画面の向きをタテからヨコに変えることで1本のストーリーを別の視点から楽しめるようにした。開発者は「漫画は絵巻物を起源として、印刷の技術によって綴じ型へと変化を遂げました。現代の技術の進化は、漫画をさらに進化させると考えています」と解説する。

スマートフォンの特性を生かした短編漫画作品「次世代の漫画 I」

「、。(テンマル)」は、原稿用紙や手紙に文章を手書きしていた時代に、人が味わっていた気持ちの整理を抽象的に可視化する試み。「波紋の動きが変わることで、キーボードで文字を打ちながらにして、気持ちを整理できることを目指しました」(開発者)。

文章を書く気持ちを抽象的に可視化する「、。(テンマル)」

「ふわッチ」は、スイッチを押すと布の色が変わるソリューション。ステッチ状に縫い付けた糸にインタラクティブ性を加えることで、繊維の色彩・日常への変化を与えることを目的にしている。将来的には、スマートフォンをタップすることで自由に服の色を変える、といったことができるようにしたいという。

スイッチを押すと布の色が変わるソリューション「ふわッチ」

「Cubic Roove」では、ARによる立体的な表現を目指した。iPadなどのスマートデバイスを通してデジタル映像を覗き込むと、肉眼では見えなかったARが飛び出す仕組み。ARマーカーなしで認識させる技術が新しい。「ミュージック・クリップで、音楽の裏に隠れたコンセプトを表現することも可能です」と開発者。

「drop」は、水の染みこんだスポンジから水滴が落ちる様子を音楽にしようという試み。「自然現象の中に潜んだ独特のリズムを抜き出すことで、自然の理(ことわり)に触れ、そこにあるかも知れない"なにがしか"のメッセージを読み取る試みです」とは開発者の言葉。

ARによる立体的な表現を目指した「Cubic Roove」(左)と、水の染みこんだスポンジから水滴が落ちる様子を音楽にしようという試み「drop」(右)

「別世鏡」は、あらかじめ用意した紙ベースの漫画において、続きをデジタルで楽しめる趣向。別室が用意されており、鏡を通じて体験者を3次元から2次元の世界へと誘う。「漫画からリアルへ、リアルから漫画へと次元の境が曖昧になっていく体験をお楽しみください」(開発者)。

鏡を通じて体験者を3次元から2次元の世界へと誘う「別世鏡」

「OTOPE (Product by K-)」は、触感と聴感の探求をテーマとした体験型プロダクト。暗闇の中で視覚を遮断して体験する。そこには触ったこともないものに触って身体に付着させる触覚体験、聞いたこともない音を聞く聴覚体験が待っている。モノや素材の持つ声を「聞きわける」ことを目指しているという。目の不自由な人と同じ感覚を共有でき、語り合えることを目指した。

触感と聴感の探求をテーマとした体験型プロダクト「OTOPE (Product by K-)」