献立づくりからの解放

Kit Oisixが働く女性から支持されている理由は前ページで述べたとおり、安心安全な食材を使っていることや、調理が簡単にもかかわらず"手抜き感"が少なく、手作り実感があること、野菜をしっかり摂れることなど。しかし、それ以外にも大きな理由がある。

それは、献立づくりからの解放だ。

大熊氏によれば、もともとは調理時間の短縮を目的にKit Oisixを発売したものの、ユーザーからは「献立を考えなくていいのが助かる」といった声が多く寄せられた。多くの女性が日々の献立に頭を悩ませている現状が浮き彫りになったかたちだ。献立を考えるのも大変だし、考えた挙句に「また同じ?」と家族から不満をぶつけられるのもツライところ。Kit Oisixでは定番のほかに週替わりで10メニュー以上を提供。年間で約350メニューを提供しているため、仮に毎日Kit Oisixを夕食に使ったとしても、ほとんど毎日ちがう献立となる。

オイシックスが女性の活躍推進に積極的なクレディセゾンとサイバーエージェントの協力のもと行ったモニター調査の結果。実は献立が一番の悩みだった。それを証明するかのように、約9割がKit Oisixを実際に使ってみて「献立を考えなくてよい」のがラクと回答

メニュー数もさることながら、Kit Oisixのコンセプトは「プレミアムな時短」。ただの時短ではなく、有名シェフや料理家が考案した上質感のあるメニューを提供することで「使うことがむしろ賢いと思ってもらえる」(大熊氏)。

食の安全を当たり前に

Kit Oisixをさらに拡大するための試みのひとつが、賞味期限の延長だ。大熊氏によれば、Kit Oisixユーザーから多く寄せられる要望でもある。到着後23日保証のフローズンタイプが特にワーキングマザーに人気だという。緊急用として冷凍庫に1つあると安心、という声も寄せられているとか。忙しい女性のライフスタイルに沿うかたちでサービスを拡充している最中だ。当面の目標は「今週忙しいな、夕飯どうしよう」と思ったときの選択肢として、外食やお惣菜に加えてKit Oisixが当たり前になることだという。

もちろん拡大していきたいのはKit Oisixだけではない。オイシックスに出会う場所を増やすために2010年からリアル店舗をオープンし、恵比寿や吉祥寺などで展開している。オンラインでは30代~40代の女性がメインのユーザーだが、リアル店舗ではより幅が広く、特に50代以上の女性の来店が目立つそうだ。

オイシックスの代表的な野菜。左からピーチかぶ、極生フルーツコーン、トロなす

放射性物質に関する取り組みを強化。対象の全アイテムを自社検査している

リアル店舗のひとつ、Oisix CRAZY for VEGGY アトレ吉祥寺店

なぜオイシックスを広げていくのか。この問いに対して、大熊氏は「食の安全がニュースになる現状は不幸だと思うんです。当たり前に安全な食べ物がある、という社会を実現するのがオイシックスの使命。だからこそ、オイシックスをもっと知ってほしい」と語ってくれた。やはり、おいしっくすくらぶへの入会は、妊娠や出産など自分以外の健康が気になるタイミングで検討する会員が多いという。

夫も料理を手伝える

共働き家庭の夫・パパがKit Oisixを作ってみる料理体験イベントを、ABCクッキングスタジオと共同で実施

ただし、オイシックスを拡大することは視野に入れつつも、ひとまず「現在のコアユーザーである30代~40代女性の間でも、まだまだ広がる余地があるとみています」(大熊氏)とのこと。働く女性がますます増えていけば、それだけ潜在ユーザーも拡大する。オイシックスにとっては追い風が吹いている状況だ。

今回はKit Oisixを中心に紹介したが、ユーザーが増えているのは「女性が使いやすい」だけでなく「男性が手伝いやすい」ことも理由なのではないだろうか。夫に料理を任せると「キッチンが汚くなる」「ムダに高い調味料を買ってくる」など妻の不満はよく聞く話。せっかく張り切って手伝っても文句をいわれるなら、夫としてもやる気をなくすだけだ。夫と妻、どちらにとってもうれしいツールである、というのも重要な要素のひとつだろう。オイシックスも、料理体験イベントなど積極的に男性がKit Oisixを作ることを提案する試みを行っているところだ。

先述のモニター調査でも、「Kit Oisixなら自分でも夕食の調理ができそう」と回答した男性が多かった