既存システムの高付加価値化に商機

音声対話システムを開発・展開している企業にとってみれば、自社のシステムに「人間らしさ」という特徴を付け加えられるハートークは魅力的な“プラスアルファ”に映るかもしれない。例えばSiriを展開するアップルのような企業が、自社のシステムにハートークを取り入れたいと考える可能性もあるわけだ。

アップルから商談が舞い込んだと仮定した場合、対応はどうなるのか。ハートークの考案者でもあるヤマハの松原氏に聞くと、ヤマハ自身がアップルとやり取りをしてもいいし、フュートレック経由で話をすることも可能という回答だった。ヤマハはフュートレックおよびNTTアイティと排他的な契約を結んでいるわけではないため、ハートークに関心を抱く企業とヤマハが直に取引を行うケースもありうる。

韻律の構成要素である会話の音程(写真左)について、エレクトーンを用いて説明するヤマハ 技術本部 研究開発統括部 新規事業開発部 企画担当次長の松原 弘明氏(写真左)

ちなみにハートークの技術は、日本語以外の言語にも技術的には適用可能で、ヤマハでは研究が進んでいるという。しかし、言語が違えば韻律も大きく変わるため、多言語対応は「相当難しい」(松原氏)というのが本音のようだ。

人間らしい音声対話システムを必要とする領域とは?

ハートークと親和性の高そうなのがロボットだ。特に人間そっくりの人型ロボットについては、ハートークとの連動により印象が一変してしまう可能性がある。人工知能と連動する人型ロボットが、対話の相手と調子を合わせて喋る能力を身に付ければ、その「人間らしさ」はかなり高まるだろう。

一方で、ハートークの普及には乗り越えるべき課題もあるように感じる。何らかの疑問を持つユーザーが音声対話システムに話しかける際、求めるのは適切な回答であって、適切な「韻律」を重視するかどうかは人それぞれだからだ。

ハートークは音声対話システムを根底から変えうる技術かもしれないが、実際に普及するかどうかは現時点で未知数。「人間らしい音声対話システム」を本当に必要とする領域はどこか。ヤマハらが探り当てられるかどうかに注目したい。