鎌倉で最も古い歴史を持つ神社を詣でる
鎌倉文学館の見学を終えて敷地を出たら、すぐ右手の住宅地に入って行こう。路地を道なりに歩いて行けば、間もなく、小規模ながら特徴ある外観の洋館が見えてくる。「鎌倉市長谷子ども会館」として利用されているこの建物も、かつて富豪が別邸として使っていたもので、明治時代の住宅建築の貴重な遺構だ。明治から戦前にかけての鎌倉は、別荘地・保養地として発展したため、このような洋館が、市内各所に今なお残っている。その子ども会館の少し先にあるのが、鎌倉最古の神社とされる甘縄神明神社である。
鎌倉の歴史は、源頼朝(1147~1199年)が鎌倉幕府を開いた後に始まると思われる方が多いかもしれないが、その歴史は意外と古く、「鎌倉」という地名は和銅5年(712)成立の『古事記』に早くも登場している。市内には奈良時代・平安時代から続く歴史を持つ寺社もいくつかあり、最古の歴史を持つとされる寺は杉本寺(杉本観音)で、寺伝によれば奈良時代の天平6年(734)の創建。一方、最も古い神社が甘縄神明神社で、和銅3年(710)の創建とされる。
甘縄神明神社境内には、元寇(蒙古襲来)を戦い抜いた執権として名を残す北条時宗(1251~1284年)の「産湯の井」などが残り、石段上の社殿の前からは家々の屋根の向こうに海が広がっているのが見える。この場所はにぎやかな長谷寺の門前町から目と鼻の先なのに、いつ来ても本当に静かだ。耳をすますと小鳥のさえずりや森の木々の葉ずれの音が聞こえ、いつまでものんびりしていたい気分になる。
●information
甘縄神明神社
神奈川県鎌倉市長谷1-12-1
アクセス: 江ノ島電鉄「長谷駅」徒歩5分
甘縄神明神社に来たならば、やはり長谷寺(長谷観音)にも行っておきたいところ。長谷寺は鶴岡八幡宮や大仏と並ぶ鎌倉有数の人気観光名所であり、特に5月に訪れるなら"あのイベント"を狙って訪れてみるといいだろう。続いては、そんな春の長谷寺の魅力を紹介したい。