VRが抱える問題点

VRHMDの製品は出揃ってきたが、コンテンツは間に合うだろうか。VRの特徴を得るためには3DCGが有効だが、実写でもVR体験ができるよう、360度視野の映像を記録できるカメラなども登場している。たとえば観光地や極限状態に近い自然などの映像を360度のVR映像で配信するコンテンツなどは、比較的すぐに数が揃ってくるだろう。

ただし、VRHMDは製品によって解像度や視野角などが微妙に異なる。コンテンツの供給側としては制作コストを下げるため、供給するフォーマットは絞り込み、できれば1つに統一したいところだろう。VRHMDの勝者が固まるまでは、なかなかうかつにコンテンツ制作にとりかかれない、ということにもなりかねない。従って、特にCGで構成されたゲーム等の一般向けコンテンツについては、徐々に様子を見ながら登場していくことになると思われる。

また、VRは普及にいくつかの障壁がある。まず、13歳未満は健康・発育上の理由から利用できない点だ。VRには最初から「大人のエンターテインメント」として普及しなければならないという縛りがあるのだ。

また「体験してみないと凄さがわかりにくい」ことも、VRにとって不利な部分。業界側でもVRコンテンツを楽しめる体験会などを随時開催していくだろうが、一度に体験できる人数には限りがある。すでに有料でコンテンツ展開を発表したところもあるが、あまり高価では試そうという人が現れず、安価すぎればビジネスとして成り立たない。値段との兼ね合いが難しい。

そんな中、ブレイクスルーになりそうなのは既存のアトラクション等と組み合わせた複合的なVR体験のできる施設だ。すでにUSJではVRHMDを装着したまま搭乗するジェットコースターなどのアトラクションが搭乗しており、VRならではの映像に実際の体の動きが伴うことで、臨場感を数倍にも引き上げる試みが好評を得ている。また、ゲームメーカーのバンダイナムコも、期間限定ながらVR体験のできる施設をお台場に設置している。

VRコンテンツはもともとリアルな映像で「脳を騙す」面白さがあるわけだが、これにわずかな体の動きを組み合わさることで、説得力が数倍にも増強される。映画の4DXなどと同じ理屈だ。逆に言えば、こうした仕組みは家庭では実現しにくい。従ってVRはコンシューマ市場よりも先にアトラクションなどを設置するテーマパークといったレジャー市場で成立するように思われる。

元年は元年だがコンシューマ向けは来年以降?

スマホや電子書籍、IoT、AI、ドローンなど、マスコミが「~元年」と言い出しても、あまりその実感がわかない、ということはしばしばある。業界側の盛り上がりとコンシューマへの普及にはタイムラグがあるのでやむをえない部分はあるのだが、VRHMDについても、上述したようにいくつかの制約などがあるため、本格的に一般ユーザーが普及を実感するのは来年あたりになってから、ということになりそうだ。

ただし、エンターテインメント業界、特にアトラクション分野においては、一足先にその実力を享受できる機会が増えそう。近くで体験できる場所があれば、ぜひ積極的にその凄さを味わってみてほしい。