キャリアを守るために両立をマネジメントする時代
「日立ソリューションズは企業の中でもダイバーシティがだいぶ進んでいる」。こう分析するのは、企業の女性登用の実情に詳しい松蔭大学の田中聖華准教授。事実、日立ソリューションズのように個別の育成計画書を作るまで手が回っている企業はほとんどないそうだ。進んでいる企業では、今まで子育て支援を通じて女性が退職しなくてもいいように守るという感じだったが、今ではキャリアのために両立をマネジメントするというフェーズにきているという。
先進企業が真っ先に直面する課題
田中准教授によると、ここには新しいタイプの離職者の発生を招く可能性があるという。「女性自身がフェーズの切り替えについていけなくなる可能性がある」。意欲があってプランがある人はやりやすいだろうが、ついていけない人が生まれる。そういった人のモチベーションをどうやって上げさせるかという課題があるが、そこに対しての答えは今のところ出ておらず、企業は模索を続けているという。
社会全体の女性活躍の取り組み
「一億総活躍社会」の実現を目指す政府。子育て支援や介護支援、高齢者雇用の促進によって労働人口を増加させ、さらに非正規労働者の待遇改善や、最低賃金を引き上げることによって、消費支出を2025年度には20兆4000億円押し上げるとの試算を内閣府は直近で出している。女性の活躍推進に関わるのは上記の試算の中で主に子育て支援や介護支援の部分だろう。日本全体の経済成長にとって女性登用の拡大は重要になっている。「2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%に」というスローガンを掲げる政府は、その1つとして昨年の夏、「女性活躍推進法」を成立させ、この4月から施行した。この法律で中央官庁、地方自治体、301人以上の従業員がいる企業は、組織内での女性の活躍状況の把握や課題を分析をした後、今後の行動計画の策定、それを届出た後に情報を公表することなどが義務づけられた。期限は2016年4月1日。
女性活躍推進法後の課題
女性活躍推進法について田中准教授によると「成立から施行までが半年では、期間が足りない」と指摘する。日立ソリューションズのように、ダイバーシティの中長期プランのあるようなところばかりではなく、一からデータを集めた企業も多い。そのため提出された行動計画について「間に合わせただけという声も聞いた」と田中准教授。従業員の声を聞く時間がなかった企業は、現実に即した行動計画になっていない恐れがあるため、提出後に問題が浮上する可能性を指摘した。
行動計画未提出が3割
実際フタを開けてみれば、4月1日現在、行動計画の提出を義務付けられた全国およそ1万5000社のうち、約3割が未提出と厚労省が発表。今後政府はどうしていくのだろうか。厚労省は、「今後、従業員301人以上の大企業のうち、一般事業主行動計画を策定・届出していない企業に対して都道府県の労働局が、電話などを使って、策定・届出を個別に強力に働きかける『ローラー大作戦』を実施し、女性活躍推進法の着実な履行確保を図っていきます」としている。