「男女雇用機会均等法」施行から30年。この節目に、企業の女性登用のレベルを「見える化」することで、女性の社会進出がさらに加速することが期待される「女性活躍推進法」が施行された。現在企業は業界や職種によってその進捗度合いはバラバラだが、女性活躍の先進企業は今、育児をしながらも仕事を続けるための両立支援から次のフェーズに移行している。そこにも新たな課題が見えてきている。その課題とは何か。

復職セミナーに参加する休職中の女性社員など

 育休から復帰後も戦力として期待する企業

3月、東京都内にある情報サービス業の日立ソリューションズ本社では、翌年度に育休から復帰予定の女性およそ50人が久しぶりに会社に来ていた。彼女たちの目的は、毎年この時期に会社が開いている復職セミナーへの参加だ。

「企業がみなさんに期待していること、それはまさしく戦力なのです。貢献できる存在ということです。『私ではない』という人がいるかもしれないですが、少なくともそういう時代に生きているのです」と、集められた女性社員の前でそう話し始めたのは、日立ソリューションズで女性活躍推進の旗振り役を務める、ダイバーシティ推進センタの小嶋美代子センタ長。この後も、「戦力」「活躍」といった言葉が彼女の口から何度も出てきた。

会場で話を聞いていた筆者は驚いた。女性を雇用の調整弁として使い捨てる企業もある。そんな中、戦力として職場に戻ってくることを期待されているというのは、女性にとってうれしいことかもしれない。一方でブランクがあり、これから時間的な制約がある中で働く彼女たちからすれば、戦力として求められることは、心の負担になる恐れもあると思ったからだ。

復職セミナーに参加した吉田史絵さんは「『あなたに期待している』ということが伝わって、実はプレッシャーに感じました。気を引き締めていかなくてはならない」と話した。

日立ソリューションズダイバーシティ推進センタの小嶋美代子センタ長

「ちょっと今回は厳しいことを言ったかもしれません」と小嶋さん。日立ソリューションズでは、出産後、女性社員が職場に戻ってこられるように以前から環境を整えてきた。そのため、最近では出産によって離職する女性はほとんどいなくなったという。その一方、復職した女性が権利を享受するだけになってしまうのではないかと、危惧しているという。

いままで復職セミナーに参加する際、子どもの一時預かり先が見つからなかった人には、子連れ参加を認めていたのだが、今年は認めなかったという。「子どもを連れてくることが駄目だというわけではありません。ただ預け先を見つけておかなくてはならないのだから、『働く準備をしてください』という意味です」と小嶋さん。