アラフィフの女性が避けて通れない更年期障害や、20代・30代の生理不順などに密接に関わっている女性ホルモン。生涯で分泌される量はスプーン1杯分とも言われているが、このわずかな量が女性の気分の浮き沈みを左右するといっても過言ではない。
通常であれば、加齢にともない女性ホルモンの分泌量は減少していく。特に閉経前後はその量が一気に減少し、ホットフラッシュや頭痛、めまい、動悸(どうき)などの更年期障害へとつながる。
それらの苦しさを緩和させるための一つとして「ホルモン補充療法」があるが、具体的にどのような治療を行うのだろうか。ホルモンに詳しいAACクリニック銀座の院長・浜中聡子医師に伺ってみた。
補充療法の種類
治療に先がけ、現在のホルモン値や発がんリスクを知るための血液検査を行うことが望ましい。米国ではホルモン補充療法で乳がんの発症率がごくわずかに増加したという報告もあったことから、検査で腫瘍マーカーなどを確認し、補充するならばどれぐらいの濃度にするかといったプランを策定するためだ。
補充療法で用いる薬剤はさまざま。以下に薬剤の種類や形態ごとの違いをまとめたので参考にしてほしい。
種類
種類は大きく分けて、天然由来のものと合成のものとに分けられる。普通の婦人科で提供している女性ホルモンの大半は合成ホルモンで、吸収性や定着性を考慮し、卵巣から出てくる女性ホルモンとは多少形状が異なるという。
「合成のものが『絶対にいけない』というわけではないですが、発がんや血栓などの副作用リスクは天然型のほうが少ないです」と浜中医師は解説する。
用量
用量は高用量から低用量までいろいろとある。どれが自分にとって最適かは、事前の検査などでわかる。適切な用量を補充することが補充療法では大切と覚えておこう。
形態
薬剤の形態は内服用の錠剤や皮膚に貼るパッチ剤、皮膚に塗布するクリームにゲルなど、実に多様だ。その内容も、エストロゲンとプロゲステロンの合剤や、エストロゲンのみのものなどがある。「私たちのクリニックでは天然型のゲルを用いています。経皮吸収式で血中濃度の上昇も緩やかで、長期投与の副作用も少ないからです」。