ますます重要性が高まる函館のポジション
北海道南部(道南地方)の玄関口である函館市は、これまでも観光地として確固たる地位を築いてきているわけだが、北海道新幹線の開業により、その地理的な優位性はますます高まっていきそうだ。青森県へのアクセスが向上したことで、函館市は北海道旅行と青函圏周遊という南北両方向の旅を提案できる立ち位置を獲得した。道南地方と青森県を円で囲うような観光エリアを想定した場合、その円の中心地点に位置する函館市は観光ハブとして発展する可能性を秘める。
函館市の観光部に話を聞くと、青函圏周遊促進事業には同市と青森県側3市の補完関係を強化する効果も期待できるという。異国情緒が魅力の函館市には、裏を返せば日本文化を前面に押し出せるような観光資源に乏しいという側面があった。青森には「弘前城」、「ねぶた祭」、「津軽三味線」など、分かりやすく「和」を感じられる場所や文化が豊富に存在する。距離的には近いが、文化的には違いのある函館と青森のコントラストも、青函圏で活用すべき重要な観光資源といえるだろう。
春の観光シーズンが最初の試金石に
エリア内に弘前城と五稜郭を抱える青函圏にとって、北国で桜が見ごろを迎える4月下旬から5月上旬にかけての時期は、周遊博の効果を測るうえで最初の試金石となるだろう。青函圏周遊博では桜を巡るモデルコースとして、八戸市の三八城公園、青森市の合浦公園、弘前市の弘前公園、函館市の五稜郭公園の4カ所を2泊3日で回るルートを提案している。
桜の名所が豊富な青函圏。弘前城(写真左)では石垣修理のため、期間限定で天守の位置が変わっている。岩木山を背景に桜と天守を同時に撮影できるのは、天守が元の位置に戻る5年後までだという。五稜郭(写真右)では高さ107mのタワーから桜を見下ろすことが可能だ |
青森市の八甲田山、弘前市の白神山地、函館の夜景など、観光資源を豊富に抱える青函圏の周遊ルートは色々と考えられる。夏には「弘前ねぷたまつり」と「青森ねぶた祭」を組み込んだ旅行プランが盛り上がりそうだ。
2030年度末までを目指す北海道新幹線の札幌延伸が完了すれば、新函館北斗駅は同路線の終着駅たる地位を失うため、観光地としての立ち位置にも何らかの影響を受ける可能性がある。延伸完了までの十数年という期間は、函館市にとって多くのリピーターを確保するチャンスだ。函館を訪れる人が増えることで、周遊客の流入が期待できる青森県側の3都市にとっても、この期間は観光都市としての発展を目指すうえで正念場となるだろう。
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