高価格帯ユーザーを優遇、低価格帯はMVNOでカバー
NTTドコモは日本で最も多くの契約者を抱えているだけに、ユーザーが他のキャリアに逃げなければ“勝ち”となる。それだけに、長期利用者に向けた割引などの施策を手厚くしたこと自体は理解できる。だが一方で、割引率を見ると、「シェアパック30」などの高額なプランの割引率が大きく高められる一方、最も安価な「データSパック」に関しては長期割引の拡大がなされておらず、そうしたユーザーに対する継続利用のメリットは少ない。
こうした割引に対する対応からは、NTTドコモが多くのサービスを利用し、高額な料金を継続的に支払ってくれる、ロイヤルカスタマーを優遇する方向へと舵を切っている様子を見て取ることができる。大容量のシェアパックを契約してくれるユーザーは他社に移らないよう優遇を高め、継続利用へとつなげる一方、一昨年に「データSプラン」の契約者が想定を超えて減収を余儀なくされたこともあり、小容量で安価な料金プランを選ぶユーザーを、無理に獲得したくはないと考えるようになったと見られる。
一方でNTTドコモは最近、そうした低価格を求めるユーザーの受け皿に、MVNOを活用しようとしている様子も見せている。というのも、ここ最近NTTドコモは、スマートフォンをかざして決済できる「iD」を、MVNOのSIMとFeliCa搭載SIMフリー端末の組み合わせでも利用できるようにしたり、「dTV」「dマガジン」など、同社が運営する「dマーケット」の主要サービスを、MVNO経由で提供したりするなどの施策を打ち出しているからだ。
こうした取り組みは、NTTドコモがMVNOを敵ではなく味方として捉え、価格に敏感なユーザーの獲得に活用するようになったと解釈できる。MVNOの多くは、接続料が安いNTTドコモの回線を利用している。それだけに、NTTドコモのネットワークを用いたMVNOにコンテンツなどを提供するなどしてサービスを強化してもらい、低価格を求める層をauやソフトバンクに逃がさず、なおかつ自社の収益に影響を与えない形で獲得することで、売り上げにつなげたいわけだ。
一見すると2年縛りの問題に応える施策に見えて、実は長期契約の強化で高価格帯の利用者を囲い込みつつ、フリーコースとMVNOの活用で低価格帯の利用者も獲得し続けるというのが、今回の施策におけるNTTドコモの真の狙いであろう。実質0円の自粛などで番号ポータビリティによる“攻め”の戦略をとるのが難しくなったことから、NTTドコモが総合力を生かして守りを固める、したたかな戦略に出てきたといえそうだ。
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