2015年9月に、Yahoo! JAPANグループであるIDCフロンティア(IDCF)は福島県白河市の大規模データセンター「白河データセンター」に新しく3号棟を建設することを発表した。
白河データセンターでは、これまで1号棟と2号棟において、クライアントのサーバ機器を預かるハウジング・コロケーションサービスを提供してきたが、今回の3号棟は丸ごとYahoo! JAPAN向けに提供されることになっている。増加するデータの格納や、Yahoo! JAPANが保有するマルチビッグデータを活用するための処理基盤強化としての役割を担ったデータセンターとなるという。
この3号棟が2016年3月に竣工した。今回、できたてほやほやの3号棟の中を取材させてもらったので、その内容とともに、白河データセンター全体の「今」をお届けしたい。
なぜ「白河」なのか?
IDCFでは、東京5カ所と大阪、横浜、北九州、白河の全国9カ所でデータセンターを運営している。日本の東西に分散して配置していることによって、万が一大規模な災害・障害でデータセンターに支障があった場合にも、そのほかのデータセンター間で負荷分散やバックアップサイトへの切り替えを自動的に行うことができるような仕組みとなっている。
では、なぜ「白河」なのか? その理由は大きく3つある。1つは白河の冷涼な気候を活かした外気での冷房が可能なことにある。
1号棟と2号棟は、外気冷房と水冷空調を組み合わせ、ファンを極力使わない構造となっており、年間負荷の約9割を外気で冷やしているという。そのため、PUE(Power Usage Effectiveness)は約1.2と公表されており、同社のシミュレーションでは1.17まで落とすことができているとのことだ。
理由の2つめは、郊外型データセンターと同等のネットワークアクセスが可能な点である。東京-白河データセンター間のレイテンシ(拠点間の通信の往復時間)は3.5ミリ秒前後となっている。ネットワークの伝送路を直線距離に極力近づける最短経路で設計し、中継ノードも可能な限り少なくすることによって、この数値を実現しているという。
ちなみに、東京-大阪間は約7~8ミリ秒、大阪-北九州間は約10ミリ秒となっている。同社では、東京・大阪から10ミリ秒圏内の場所で、データセンターを建設していくという思想があるそうだ。
3つめは、電力供給事業者の分散にある。栃木県までは東京電力の管轄となるが、福島県にある白河データセンターは東北電力の管轄となる。電力供給事業者を変えることによって、より災害・障害への対策が取れるようになっている。
白河データセンターは栃木県との県境に位置し、ネットワーク・電力供給事業者の双方の視点から見て、絶妙な位置に建設されていることになる。
3号棟の特徴は?
今回新設された3号棟は、1号棟や2号棟と大きな違いがある。まず建物の構造がまるっきり異なっている。1号棟と2号棟は4階建てで、直接外気空調を取り入れるために、複雑な構造となっている。それに対し、3号棟は全6棟で構成される平屋型の施設となっている。つまり、3号棟には直接外気空調は取り入れられていないことになる。3号棟の空調方式は、間接外気空調と空冷空調システムで構成されている。
Yahoo! JAPANからの「すぐに用意してほしい!」という要望に応えるべく、建設開始から約5カ月間で完成させたという。ちなみに、通常のデータセンターだと、建設に約1年かかるそうだ。
3号棟を形成する各棟のラック数は約50ラックで、全体では約300ラックの収容が可能となっている。
それでは、白河データセンターを案内してもらったので、順々に紹介していこう。まずは、白河データセンターの外にある設備から紹介していきたい。