子供がかかりやすい病気として知られる「中耳炎」。耳が痛くなる症状を想像する人が多いだろう。しかし中耳炎の中には、目立った症状が出ないゆえに気づきづらいものもあることをご存じだろうか。
今回は、その「滲出(しんしゅつ)性中耳炎」について、日本医科大学 耳鼻咽喉科 教授(武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科 部長)の松根彰志医師に伺った。
インフルエンザや風邪の悪化に注意
中耳炎には、段階的にいくつか種類があります。まず2歳ぐらいの子供が多くかかるものが「急性中耳炎」。耳の構造は、外側から「外耳」「中耳」「内耳」の3つに分けられます。急性中耳炎が起こるメカニズムとして、鼻やのどがウイルスや細菌に感染して中耳(内耳の神経の手前)まで到達し、炎症が起こることで音の振動が伝わりづらくなります。難聴以外の症状としては、発熱や耳の痛み、耳だれなど。もちろん、風邪やインフルエンザが悪化して、急性中耳炎になることはよくあります。
そして急性中耳炎を繰り返すうちに、中耳に滲出液(炎症によって出る血液や組織液)がたまる「滲出性中耳炎」や、鼓膜に穴があいたままの状態が続く「慢性中耳炎」へと進行します。滲出性中耳炎が4~6歳で多く見られるのに対し、慢性中耳炎は小・中学生以降に多く見られるため、発症ピークに違いがあります。
"サイレント"な中耳炎に気づくには?
滲出性中耳炎は、発熱も耳の痛みもないうえに、耳のつまり感や難聴を訴えないことも多い、まさに"サイレント"な中耳炎。病気にかかっていると気づかないことも多いので、子供にとって注意が必要です。次に挙げるようなサインを見逃さないようにしましょう。
滲出性中耳炎に気づくためのポイント
・よく鼻をすすっている
・ひどいいびきをかいている
・テレビの音量を上げることが多くなった
・呼びかけに応じないことが多くなった
一般的には6~7歳くらいになると、顔面の発育、アデノイドや(口蓋)扁桃の縮小、感染症への抵抗力がつくことなどによって、自然治癒することも多いようです。ただし気づかずにいると、耳が聞こえづらい原因に本人も周りも気づかずに成長することになりかねません。