進行すると急激な視力低下も
抗生物質による治療を行えなかった時代は、副鼻腔炎が脳の病気(脳膿症、髄膜炎、硬膜下膿瘍など)に進行することもありました。現代では、そのような重とくな合併症は少なくなったとはいえ、副鼻腔炎を治療せずに放置すると、中耳炎や気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症など、鼻だけの症状で済まないこともあります。
そして意外と知られていないのは、目の合併症。急性副鼻腔炎が進行すると、目の疲れや視力低下が起こることもあります。怖いのは、その進行スピードです。例えば週末に「目の調子が悪いな」と思ったら、月曜には視力が著しく落ちている、というケースがあります。急性副鼻腔炎から鼻性視神経炎を発症したためです。この場合、落ちた視力は戻らないことも多いので要注意。"鼻の病気が原因の目の症状もある"ということを覚えておいてください。
親知らずを抜くときは要注意
また、副鼻腔炎と歯の病気の関係性も見過ごせません。親知らずを抜くときに副鼻腔炎の症状がある(治療をしている)場合は、相互に影響する可能性があるので、十分に検査をしておく必要があります。親知らずではありませんが、上の歯で前から6番目の歯の付け根は副鼻腔(上顎洞)の底部にもっとも近いところにあり、抜歯することで穴が空いてしまうこともあります。そうすると、口から入れたものが鼻から出る、または逆のケースもありえます。
なお、歯が悪くなると、食事が思うようにできなくなるばかりか、咀しゃく運動(かむこと)の低下による脳への影響や、歯周病によるさまざまな病気のリスクも報告されています。自分の歯を大切にすることは、鼻はもちろん、全身の健康を守る鍵なのかもしれません。
一年中鼻水が止まらない、もしくは風邪のほかの症状は治ったのに鼻だけが長引いているという人は、一度、副鼻腔炎の可能性を疑ってみてもよいだろう。そして、花粉症やインフルエンザなどで症状がさらに悪化することがないよう、早めの治療を心がけてほしい。
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記事監修: 松根彰志(まつね・しょうじ)
医学博士
1984年 鹿児島大学医学部医学科卒業
1988年 鹿児島大学大学院医学研究科修了
1988年~1990年 ピッツバーグ大学(アメリカ合衆国ペンシルバニア州)留学
NPO 花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会 副理事長、事務局長
同団体は、花粉症・アレルギー性鼻炎や蓄膿症・副鼻腔炎に正しく対処するための情報発信・活動を推進しています。
日本医科大学医学部 耳鼻咽喉科学 教授
日本医科大学武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科部長、病院研究委員会委員長
日本耳鼻咽喉科学会、日本アレルギー学会、日本鼻科学会、日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会 各学会の代議員
神奈川気道炎症病態研究会 代表幹事 など