続いて駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科教授で、東京都栄養士会会長の西村一弘氏の講演が行われ、この日のレシピに使われた「パラチノース」は、1型糖尿病患者にどのような働きが期待できるのか解説された。
パラチノースは、そもそも自然界でも蜂蜜の中に存在している物質で、酵素によって砂糖からも生成することができるもの。甘さは砂糖(スクロース)の半分ほどで、吸収される速度は約1/5と非常にゆっくりと吸収されることが明らかになっている。さらに、パラチノースは他の糖質と一緒に摂取した場合、その組み合わせた糖の吸収もゆっくりにしてくれる効果があるという。
パラチノースの働きを糖尿病患者にどう応用するか
そこで西村氏は小児1型糖尿病患者を対象に、砂糖を使ったおやつとスローカロリーシュガーを使ったおやつを食べさせた場合に、どのように血糖値の変化が起こるかを検証した。すると、食後1時間で、砂糖のおやつを食べた子どもたちは血糖値が45.5mg/dlも急上昇したのに対し、スローカロリーシュガーのおやつを食べた子どもたちの血糖値は0.7mg/dlの上昇とほぼ横ばいで、大きな変化はなかったという。
さらに、別の年に同様の研究を行った際の食後2時間の血糖値を比較した場合、砂糖のおやつを食べた子どもたちは血糖値が36.5mg/dlも極端に下がってしまっていた。一方、スローカロリーシュガーを食べた子どもたちは逆に3.1mg/dlの上昇が見られており、血糖値の持続時間が長いことがうかがえる結果となった。
このことから、西村氏は「パラチノースを配合したスローカロリーシュガーを調理に利用することによって、小児1型糖尿病患者の食後血糖値を安定化させることができると考えられる」と話し、「熱量保存が必要な成長期の糖尿病患者にとってふさわしい糖質」として、大きな期待ができると語った。