――今回の『NEWS23』のリニューアルに関して、番組はズバリどう変わりますか?
私は私のできる範囲でやるしかないですが、元気の良さは出したいです。また、夜11時からの番組ですから、家に帰ってビールでも飲んで寝るかっていう環境の人が多いと思うんです。1日いろんなことがあり、つらいこともあったけど、明日いい日が来ますようにとみんな思っている。そういう視聴者の方たちの気持ちにフィットするような番組にしたいですね。
――星さんならではのキャスター、目指すキャスター像を教えてください。
日本の平和がどうなるのか、格差がどうなるのか、若い人がどうなるのか、難しい問題をきちんとやっていかないといけないですし、権力との向き合い方についても厳しい姿勢で対応しないといけないと思っています。30年政治記者をやってきて日本の政治権力がいかに強大でしたたかで手ごわいかということは、私なりに知っているので、その政治権力としっかりと向き合っていきたいです。その前提として、報道番組ですから、きちんと事実関係をおさえて、それに基づいて説得力のある議論をしないといけません。若い方から年配の方まで、多くの人が理解できる、納得してくれるような議論の展開、事実の展開を基本として心がけたいと思います。
――政治権力としっかり向き合うとのことですが、メディアの政治権力に対する役割をどのように考えていますか?
まず大前提としてあるのは、この民主主義社会の中でも政治権力は圧倒的に強いということ。今、安倍(晋三)さんがトップになっている自民党政権というものは、権力を持っていてお金を持っていて、自分たちが発信する力もある。黙っていると権力は強大になっていきますから、それをチェックする機関がないと暴走する可能性があります。番組では賛成反対と平等に扱うべきという意見がありますが、ある問題について政権与党側と野党の意見が分かれた時に、番組で平等に扱っていると、政権の力は圧倒的に強いので与党側が優位になるわけです。ですから、そこは少し厳しめに、権力に対して目を光らせていくということをやっていかないといけません。
だからといって、ただ批判すればいいということでは、世の中の人たちも納得してくれないと思います。例えば、保育園が足りないということに対して、お金をたくさん使えばいいと言うだけではなく、どういうスケジュールでどういう財源を使ってやるのかという現実的な議論が必要です。単純なる批判ではなく、どんなやり方があるのか、みんなで一緒に考える材料を提供していく。そういったことがメディアには求められていると思います。
――これまでも『NEWS23』は、しっかり政権に対して意見していくという印象がありましたが、やはりメディアとして大切なところなんですね。
そうですね。今までのいいところは引き継いでいきたいと思います。もちろん、その前提となるのは正しい事実ですから、それをしっかり伝えた上で、批判すべきことはきちんと批判していくということですね。よく、メディアが畏縮しているとか、自主規制しているとか言われますが、少なくとも私は、37年間新聞社にいて、自分が自主規制したり萎縮したりしていると考えたことは一度もありません。そのスタンスはこれからも保っていきたいと思います。
――新聞からテレビへと移られますが、新聞とテレビの役割の違いについてはどう考えていますか?
テレビは映像の強みが圧倒的で、これは新聞のかなわないところです。一方で、テレビがまだ弱く新聞がやや優位性を持っていると感じるのは、人権や環境、財政赤字といった、あまり見えないけど大事な抽象度の高い問題。新聞は伝えているんだけれども、残念ながら影響力が下がっていて、逆にテレビは影響力が強くても、抽象度の高い問題についてもう少し頑張らないといけないと考えています。
最近だと、金銭授受問題で辞任した甘利明前経済再生担当大臣の会見は、どう見ても論理的に破たんしていました。政治と金の問題からすると相当悪質な問題ですが、テレビではなんとなく乗り切ったという印象になってしまった。これはやはり映像が強いと思います。その印象に流されて、大臣という権限を使ってお金をもらった行為は相当問題があるということを伝えきれていなかった。新聞も十分に指摘しきれていなかったですが…。テレビは雰囲気に流されないで伝えないといけないし、新聞も本当に問題だという点をしっかり整理して伝える必要がある。お互いに切磋琢磨して頑張っていかないといけないと思います。
――各局の夜の報道番組の争いというところも注目されています。特に今回、同時期に『NEWS23』は岸井さんから星さんへ、『報道ステーション』は古舘さんから富川悠太アナウンサーへバトンタッチするということで、それぞれどうなっていくのか気になっている人が多いと思います。
注目されるというのは、いいことですね。降板される古舘さんとは、一緒に番組に出たり意見交換したり、いろいろと話をさせてもらったこともありますが、古舘さんと私は役割が違うというのもありますし、私が古舘さんみたいにトークでやれと言われても無理な話です。逆に自分の得意なところ、自分の持ち味を発揮するしかないと思っています。
――持ち味というのは、新聞記者としての長年の経験ということですね。
そうですね。それ以外にありませんから、プロとしてしっかりとした商品を見せていかないといけないと思っています。もう一つ、スポーツに興味があるので、そこはいろいろできるかなと思っています。私自身やっていたのはサッカーですが、相撲もラグビーもテニスも観戦するのは好きです。この番組では、スポーツにも関わっていきたいですね。