――多くの方々が女優に憧れを抱く理由が、今の言葉で何となく分かったような気がします。演じることは喜び? 苦しみや葛藤を感じることは?
もちろん葛藤することもあります。私にとってはとても楽しいことですが、お話を作っていく上で監督がすべてを担っている。監督が作る世界観にきちんとハマらないと、その役柄は現実世界で存在することができません。目に見えないものを創り上げていく上で、監督と話し合うことはとても大切なことだと思いますが、その役柄の感情的な部分を言葉で説明するのが難しくて……。その上人見知りなので(笑)、できるだけ積極的に話し掛けたり、観察したりして取り組んでいます。
――これまでのお話を聞いていると、『女優堕ち』も運命的な作品のような気がしますね。
そうですね。私が演じた田舎娘の"井元三津子"は女優に憧れて家を飛び出し、将来的には"大女優・清嶋ルイ"へと姿を変えます。16歳から27歳までの役だったので、年齢的な部分で不自然に見えないか心配でした。外見はメイクや衣装で作ってもらったのですが、将来的に大女優へと羽ばたいていく役どころだったので、そのあたりの変化をうまく表現できるかも不安でした。女優という職業が分かりやすく描かれている作品になっていると思います。
三津子を演じる上で、しぐさや格好、振る舞いでの"だらしなさ"を意識しました。口をポカーンと開けていたり(笑)。だいたい5~6段階ぐらいと考えて、三津子の10年の成長と変化を表現しています。監督はあまり気にしなくていいと言ってくださったのですが、私はどうしても三津子の変わっていくきっかけが気になったりして。初恋とか、そのほかのターニングポイントにも注目しました。
――完成した作品を通しての自己評価は?
クランクアップしたばかりなので、まだ見ることができていませんがとても楽しみです。大人になったルイを森口さんがやられているんですが、すごくステキなんですよ! 三津子とはまるで別人のような印象なんですが、監督は「似せようとしなくていい」とおっしゃっていました。たしかに私が演じた10年の変化の中だけでも三津子はほぼ別人へと生まれ変わっています。多くの人と同じように、すてきな女性へと変わるのは不思議なことではありませんし、女優としての姿がそこにはあると思います。
このお話をいただいた時、率直に「女優役ってかっこいい」と感じました。別の方が女優役を演じていたら、きっとうらやましいと感じてしまうんじゃないかなと。そんな自分に気づきました。「女優役」の魅力に気づいて、少し誇らしい気持ちです(笑)。
――先ほどの話では、進路に迷いのある役と自分が重なり合ったと。ブログにもご自身の進路のことについて書いてある記事がありましたが、現在17歳。もう決めましたか?
一度決めてもすぐに迷ってしまいます。進学したい気持ちはありますが、お仕事と両立して卒業できるのかな……。そもそも合格するかどうか分からないうちに、心配してもしょうがないんでしょうけど(笑)。興味があるのは国際政経です。世界史がとても好きで、世界の歴史があって今があるというのをより詳しく学びたいと思っています。日本で生まれて日本で育ってきて、私には知らないことがまだまだたくさんあります。そこを知りたい。
――「すてきな大人になりたい」とも度々書いていらっしゃいますが、今のお話を聞いても理想像に向けて順調に歩んでいらっしゃるような気がします。葵さんにとっての「すてきな大人」とは?
恥ずかしい(笑)。私にとっての「すてきな大人」は「自分がイヤだと思うことを人にしない人」。それからいろいろなことを経験して、「深みがある人」。良いことも悪いこともたくさん経験し、「今までいろいろありましたが、おかげさまでこの場に立つことができています」と言えるような人になりたいと思っています。あとは募金ができる人(笑)。
――募金?
はい(笑)。街中で募金しようと思っても、「ありがとうございます!」と感謝されることを恥ずかしいと思ってしまってついついためらってしまいます……。あとは周囲から注目されそうな気がして。でも、募金をしたいという気持ちはあるので、いつも何回か通り過ぎた後に、タイミングを探ってサッと入れています(笑)。それをさり気なくできるような大人になりたいです。
■プロフィール
葵わかな
1998年6月30日生まれ。神奈川県出身。A型。身長158cm。2009年に原宿でスカウトされ芸能界デビュー。これまで、『陽だまりの彼女』(13年)、『瀬戸内海賊物語』(14年)、『くちびるに歌を』(15年)、『暗殺教室』(15年)、『罪の余白』(15年)などの映画、『表参道高校合唱部』(TBS系・15年)、『マネーの天使~あなたのお金、取り戻します!~』(日本テレビ系・16年)などのドラマに出演した。