”鍵付き記事”も配信可能に
「友だち限定記事」は、該当メディアの公式アカウントを友だちに登録すると、記事全文が閲覧できるという、いわゆる”鍵付き記事”の配信を可能にするもの。島村氏は、同機能により「ニュースメディアとユーザーのエンゲージメント(engagement)を高められる」と解説する。ここでいうエンゲージメントとは、親密さ、結びつきという意味。友だちになったメディアから鍵付きの新着ニュースが配信されれば、確かに嬉しいし、読みたくもなる。またメディアに愛着が沸けば、購読率も高まるだろう。なおLINEでは「友だち限定記事」を発展させた形で、将来的には「課金記事」も実現させたいようだ。
「分析ツールの強化」は参画メディア向けに提供される、ユーザー満足度をフィードバックする試み。このユーザー満足度は、記事の閲覧時間、接触回数などを総合的に勘案して導き出されるという。島村氏は「長く愛される媒体になるための手助けになりたい」と解説した。
LINEの勝算と狙い
当日の説明会では、地方紙や専門媒体などを含む22のメディアが新たに参画することも発表された。これにより、ユーザーは全60メディアのニュースをLINEで閲覧できるようになる。同社ではこれからもメディア各社と連携し、プラットフォームのさらなる拡大を図っていくとしている。ところで、市場にはすでに数多くのポータルサイトが存在している。LINEニュースでは今後、どのような特色を打ち出していくつもりだろうか。
ここで話は少々さかのぼる。LINEがニュース事業に乗り出した時期は、決して早くなかった。いわば後発ながらYahoo! Japan、SmartNews、グノシー、antennaといったポータルサイトに競合できた理由は、どこにあるのだろうか。本来であればポータルサイトを訪れるのは、ニュースに関心のある利用者。購読者は限られているため、競合サイトによるパイの奪い合いは避けられず、開始時期が遅ければそれだけシェア争いも不利になる。ところがLINEニュースでは、その顧客基盤ゆえに、ニュースに関心のない利用者をも取り込むことが可能だった。同社によれば、これまであまりニュースに接触してこなかった若年層を取り込み、ニュースサイトに誘導することに成功しているという。
これがLINEニュースの強みで、同社がポータルサイトを運営する意義とも言える。従来なら接触しにくかった属性の読者へニュースを届けることができるとあれば、今後も参画するメディアは増え続けるだろう。配信できるニュースが増えれば、利用者により最適な情報を届けられるようになる。この好循環が、今後もプラットフォームの成長を促していくことは想像に難くない。もちろん、これは利用者のメリットにもつながっている。これまでなら能動的に調べなければ知り得なかった情報が、LINEニュースなら受動的に得られるわけだ。
ちなみに過去の閲覧履歴をもとに、関心のありそうなニュースをレコメンドする機能自体は新しいものではない。繰り返しになるが、利用しているアプリ、興味のあるコンテンツ、どんな公式アカウントをフォローしているか、といった情報を活かせる点が、従来のポータルサイトでは実現し得なかった、LINEニュースならではの強みになっていることは言うまでもないだろう。日常生活のインフラとして、利用者には欠かせないツールとなりつつあるLINE。ニュース配信の分野においても、その存在感を増してきている。