そして福島医師によると、続発性正常圧水頭症の多くはくも膜下出血の発症後に引き起こされやすいという。
「くも膜下出血を発症すると、脳脊髄液の中に血が混ざります。血が混ざると、脳脊髄液が吸収される排水口のような部分に『血餅』(けっぺい: 血液が凝固してできるもち状の塊)が根詰まりを引き起こし、だんだん水頭症が進行していくというわけです」。
また、髄膜炎などで脳内に炎症ができると、排水口部分で癒着を起こしてやはり吸収不良になってしまい、水頭症を招くという。
くも膜下出血はスポーツや排便、性行為などの激しいアクティビティーをしているときに発症しやすい。その理由として、これらの行為時は血圧が上昇し、くも膜下出血の原因となる「動脈瘤(どうみゃくりゅう: 動脈壁の局部がこぶ状に拡張した状態)」の破裂を引き起こしやすいためと言われている。
くも膜下出血は中年から高年までの世代でも発症しやすいため、「くも膜下出血」⇒「正常圧水頭症」という連鎖が起きてもなんら不思議ではないというわけだ。
日本人高齢者の約3%が水頭症?
正常圧水頭症のガイドラインによると、ノルウェーにおける正常圧水頭症の有病率は「10万人あたり約20人」だそうだ。10万人に10人~20人という数値は、くも膜下出血の有病率と同程度のため、決して低いものではない。日本人を対象としたものだと、地域在住の高齢者の0.5~2.9%が正常圧水頭症だと報告しているデータもある。
ただ認知症と異なり、早期発見できればかなり高い確率ではっきりと症状が改善するのが水頭症だ。身近に認知症に似た症状を持つ高齢者がいた場合、念のために一度検査してもらうのもいいだろう。
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記事監修: 福島崇夫(ふくしま たかお)
日本大学医学部・同大学院卒業、医学博士。日本脳神経外科学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医。大学卒業後、日本大学医学部附属板橋病院、社会保険横浜中央病院や厚生連相模原協同病院などに勤務。2014年より高島平中央総合病院の脳神経外科部長を務める。