一部の水頭症は高齢者に多い

水頭症という疾病をご存じだろうか。あまり聞き慣れない病名かもしれないが、認知症と症状が似ているという特徴がある。比較的高齢者に患者が多いとはいえ、中高年で発症する可能性もあるため、働き盛りのビジネスマンやキャリアウーマン世代も注意が必要と言える。

本稿では、高島平中央総合病院脳神経外科の福島崇夫医師の解説をもとに、水頭症の症状や原因などについて紹介していく。

脳脊髄液がたまることで発症

私たちの頭では毎日、「脳脊髄液」という液体が500cc程度を上限に作られている。脳脊髄液は各脳室を通り脊髄腔に流れて吸収され、再び脳脊髄液が作られる。その行程は、公園の噴水に似ている。だが、この脳脊髄液の生成・循環・吸収のバランスが崩れ、頭の中に異常に脳脊髄液がたまって障害を起こすことを水頭症と呼ぶ。

「水頭症には、脳脊髄液の圧力(脳圧)が高くなるものとならないものの2種類があります。高くなるタイプは脳腫瘍などの疾患が原因で、脳内の通り道が一部せき止められていたり、ふさがっていたりすることで起きます。一方、そういった閉塞(へいそく)基点がなく、脳圧がそれほど上がらないのは『正常圧水頭症』と呼ばれます」。

正常圧水頭症の症状は「歩行障害」「尿失禁」「物忘れ」「集中力・注意力の低下」など。歩行障害によってバランスを崩し転倒しやすくなるため、骨折のリスクも高まる。これらの症状は、アルツハイマー型認知症の症状と非常に似通っている。特に高齢者の場合、周囲の家族や知人などでは水頭症か認知症かを見分けるのが困難なケースが散見される。

2つのタイプがある正常圧水頭症

一方で、正常圧水頭症はさらに2つのタイプに分類できる。何かしらの病気があってそれに続いて起こる「続発性正常圧水頭症」と原因がわかりにくい「特発性正常圧水頭症」だ。

特発性は比較的、高齢者に多く見られる。 認知症と診断された高齢者の一部は、実は水頭症であったという事例もみられるとのこと。認知症と水頭症を併発している高齢者もいるかもしれないが、水頭症ならば治療で症状を劇的に改善できる可能性もある。