とらえどころのない課題

普及・拡大に向けては、MVNO各社の努力も必要となる。格安SIM、格安スマホという言葉が広まったのは2014年。すでにかなりの月日が経過しているが、現在のターゲットはまだ、情報感度の高い"アーリーアダプター"。一般層への普及はこれから、というのがMVNO各社の見方だ。

では、ターゲットの取り込みに向け、どんな課題があるのか。端的にまとめると、実にとらえどころのない課題だったりする。なぜなら、"漠然とした不安の解消"だからだ。

ターゲット層は現在、「格安SIM」「格安スマホ」という言葉を認知したに過ぎない。MVNOには「よくわからない。だから不安」「今使っているアプリがそのまま使えるならいい」といった声が届くという。言葉の認知からの先が進んでいないのだ。

あの手この手で対応するMVNO

そのため、MVNO各社はあの手この手を尽くしている。解決策のひとつが、リアル店舗での対応だ。2015年あたりから、MVNO各社は家電量販店を中心に専用ブースを設置、アンテナショップを設けて、対応を進めているところもある。いずれも、顔が付き合わせながら、見込客の不安をひとつずつ解消していくのがひとつの狙いだ。

キャンペーンからもその一端が伺える。「OCN モバイル ONE」を展開するNTTコミュニケーションズ、「mineo」を展開するケイ・オプティコムなどでは、「お友達紹介キャンペーン」を実施。「近しい人からの意見や後押しがターゲットの不安解消につながる」(NTTコミュニケーションズ担当者)と見ている。

「mineo」を展開するケイ・オプティコムは、別の角度からも攻める。企業からの情報伝達では、"何か裏があるのではないか"といった疑念を抱かせてしまう場合がある。誤解を避けるためにも、コミュニティサイトの「マイネ王」をうまく活用している。同サイトによって、リアルユーザーの本音を伝達し、不安解消の効果を見込むほか、そこでの声を拾ってサービス改善にも役立てているという。

コミュニティサイト「マイネ王」

機が熟すのはまだ先

こうしてMVNOの状況を見ていくと、追い風は吹きつつも、流れに乗るには、まだ時間がかかりそうだ。

足枷の"2年縛り"については、ドコモが解約期間の延長を3月に発表。無料での解約期間を従来の1カ月から2カ月に引き伸ばした。さらに今春以降、携帯キャリア3社が順次、新たなルールを策定し、条件を改善する方向にあるとされている。しかし、いずれもMVNOへの流れ込みが期待できるのは先の話だ。"漠然とした不安の解消"についても、根気のいる取り組みになるだろう。

先に述べた、大手の実質ゼロ円以下での端末販売の自粛も、端末価格が体感的に値上がりすることで、「利用者に端末料金を意識してMVNOに目を向けるきっかけになりそう」「端末を長く続ける流れになりそう。2年縛りが切れた段階で、訴求したい」(MVNO幹部)とするが、これも効果がでるのはまだ先のことだ。今はただ、機が熟すのを待つ。そんな状況にMVNOは置かれているのではないだろうか。

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