単なるデータ屋ではない

それについて渡辺氏は次のように話す。「ブラウザゲームのプラットフォーマーとして培ってきたドコモの知見です。たとえば、売れ筋のキャラクターの傾向、アニメーションのテイスト、さらには収益を生み出すイベントの内容やタイミングなどマネタイズに関わるノウハウを持っています」。

ドコモのゲームに関する知見はキャラクターデザインにまで影響を与える。画像は「Heaven×Inferno」の主人公 (C)NTT DOCOMO,INC. /tri-Ace,Inc.

ゲームアプリは当初、広告を主体にした無料アプリ、もしくは、有料ダウンロード販売が主流だった。それが今では、アプリ内課金で収益を上げるものが大多数を占める。そして、スマホの普及とともに、家庭用ゲーム向けにタイトルを出してきた大手もこの市場に参入し、今では激戦状態にある。

日に何十というゲームアプリがApp StoreやGoogle Playで公開される中で、売れ筋の傾向をデータから判別できるのは、ゲーム制作会社には、大きなメリットになるというわけだ。

特にイベントの知見については、重要になるだろう。イベントとは、決められた時間でミッションをこなし、ランキングの高い人に強力なアイテムをプレゼントするといったようなものだ。ユーザーはそのアイテムを目当てに、高ランキングを狙おうと、課金する人も多い。ゲーム制作側にとっては、ここが収益を上げるポイントになるわけだ。そのイベントを開催する時間が適切でなければ、収益も上がらないが、ドコモは、課金アイテムの単価の設定や、何曜日の何時にどんなイベントを実施すれば、収益の最適化が図れるかといった知見を持ち合わせているという。

企画から関わるドコモ

ゲーム制作に携わるドコモ。ここまでの説明では、マーケティング機能を提供しているだけという見方もできる。しかし、渡辺氏はそれを否定する。パートナーとの役割分担について「ゲームの開発・運営はパートナー会社に任せていますが、企画段階からドコモの担当者と先方との間で調整を行い、それをベースにして開発していくという流れです」。

ゲームと一口に言っても、コンセプト、シナリオ、音楽、キャラクターデザインなど、様々な要素が組み合わさる。マーケティング以外の部分でも、パートナーと話し合い、共同で制作していく。

特に今作の「Heaven×Inferno」では、シナリオまで書ける元ゲーム会社の中途社員がドコモに加わったことで、企画段階からどっぷりと絡んだという。仕上がりについても「グラフィックのクオリティ、描写の細かさなど、他社が追随できていないところまで実現した作品」と品質の高さに自信を示す。