内藤氏はシステム構築方法について、非常に多く失敗例を紹介してくれた。それはIT部門主導で、ユーザー不在の状態でシステム構築をする時に陥りがちな状況だという。
「IT部門が社長から『やれ』といわれ、利用目的がわからないままデータを蓄える箱を作り、大金をかけてHadoopを購入して導入したり、巨大なデータウェアハウスを構築したりしてしまうパターンです。システムを構築したものの、何を入れたらいいのかがわからない。何かログを蓄積しても、それをどう活用するかというシナリオがないまま作っているので失敗してしまいます。データウェアハウスを作ったものの、データモデルがユーザーから見て全く使えないものになっているという例も多いですね」(内藤氏)
こうした失敗例には、IT部門がユーザー部門の要求を想像して構築し、それが間違っていたという場合と、ユーザー部門にヒアリングをしたつもりでも全く要件定義ができていなかったという場合があるという。
「システムを作るには要件定義が必要ですが、データ活用のシステムの構築においては、ユーザーが何をしたいのか、ということが分からない、示せない、ということがよく起こります。『データを分析すれば何か出てくるのだろう』という程度です。売上を向上させたいといっても、何のデータを使って、どの部門の売上を、どう向上させたいのかという具体案がない。この状態でやれることは試行錯誤です。今多くの企業がやっているのは、事例をかき集めて他社のやっていることを参考にしようという動きです」と内藤氏はデータ活用のシステム構築の難しさを語った。
何のデータをどう使うかニーズを洗い出すワークショップ
明確な要件定義ができない状態で、どうシステムを構築するのか。日本ヒューレット・パッカードが取り組んでいるのは、テンプレートを使ったワークショップだという。
「我々はユーザー部門の方と直接話をする場を作っています。ニーズに合ったものを一緒に考えながら作りましょうという形です。具体的には、経営企画や営業企画の方、責任者と任命されたが、実際に何をしていいのかわからないというような方。つまり、IT部門ではない人向けのワークショップです。まず、HPEビジネスインテリジェンス・モダナイゼーションサービスの最初で行う、ディスカバリーワークショップのテンプレートを使って整理します」と内藤氏は語る。
具体的には、ユーザー部門から使えそうだと感じているデータを数多く挙げてもらい、日本ヒューレット・パッカードからは大量のユーザー事例を紹介する。その両者を合わせ、どのデータを使って何をやるのか、クイックスタートできそうなものを5つ選んでテンプレートに記載してもらうのだという。
「そこまでやると、具体的にこのデータを使って、これを目的に、こういうアクションを起こすということを経営陣に説明できるようになります」(内藤氏)