一方、成人では特に30~40代に脳内出血やくも膜下出血など、出血発症が多く認められるのが特徴的である。症状は出血の部位や程度により異なり、「軽度の頭痛」「重度の意識障害」「運動まひ」「言語障害」「けいれん」まで多岐にわたる。
一般に出血発症例では、小児でよく見られる脳虚血発症例に比べて重症例が多いとされている。また、成人でも虚血発症はあるが、小児と異なり「過呼吸状態時」に発作が誘発されることはほとんどないとされている。症状をそのまま放置しておくと、やはり脳梗塞につながる恐れがある。
1年あたり450人が発症している計算に
発症した際の治療法も紹介しておこう。
まず、薬による治療法としては、詰まった血管部分の血液を流れやすくするため、「抗血小板剤」を用いることがある。ただ、症状改善や脳出血予防の効果は見込めない。そのため、場合によっては手術を選ぶ選択肢もある。
血行再建術には、直接血流が足りない脳表の血管と頭皮を栄養する血管を吻合(ふんごう: 血管や腸管などの端を手術によってつなぐこと)する「直接的血行再建術」と脳表に周辺の筋肉や硬膜を接着させ血管新生を促す「間接血行再建術」、および両者を併用する「複合血行再建術」がある。今回、徳永さんは脳梗塞予防のために受けた「複合血行再建術」を行った。
国内におけるもやもや病の発生頻度は、10万人あたり0.35人(年間)とされている。国内人口を1億3,000万人とすると、単純に1年あたり450人が新たに発症している計算となる。そして、そのほとんどが「5~10歳」「30~50歳」の年代に当てはまるため、該当年代の人にとっては看過できない数値と言える。家族発症例によって遺伝的要因が関与している可能性もあるため、家族がもやもや病に患っている場合はより一層、日ごろから注意が必要だ。
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記事監修: 福島崇夫(ふくしま たかお)
日本大学医学部・同大学院卒業、医学博士。日本脳神経外科学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医。大学卒業後、日本大学医学部附属板橋病院、社会保険横浜中央病院や厚生連相模原協同病院などに勤務。2014年より高島平中央総合病院の脳神経外科部長を務める。