データサイエンスで農業の安定化に貢献
農業離れによる後継者の減少や異常気象、TPP参入により海外産の安い農産物との競争がますます激化する可能性など、日本の農業をとりまく環境は明るいものには見えない。上原氏はこうした現状の問題点として、コスト削減がカギになると指摘している。
「現在の農業は原価がかかりすぎていますから、コスト削減をどうやって実現していくかが問題です。酒造好適米として有名な『山田錦』は、美味いから好適米なのではありません。生産量や品質が比較的安定しているからなのです。ほかにもいい米はたくさんあるのに、品質が安定しないために廃れた米もあります」
こうした品質の安定化のために、農家の勘と経験に頼るのではなく、あらゆるデータを取って分析し、安定化させるための条件を発見する、データサインスの導入が、ドコモが担うべき農業再建への役割というわけだ。「農林水産省関係の研究機関とも協力していますし、ドコモの研究機関でデータサイエンス系に関わっている人たちと協力することも考えています」。
また、データ収集の副産物として、生産から流通までのルートもトレーシング可能になり、JGAP、UNGAPといった認証の取得が容易になることで、海外への輸出条件をクリアすることも可能になる。大量生産で安い農業国の生産物に対し、食の安全や高品質、健康志向といった高付加価値をアピールし、日本の「攻め」の農業スタイルを支えることになるわけだ。