TDD-LTEを採用して3.5GHz帯を活用
新たに取得した3.5GHz帯は、これまでのFDD-LTE方式ではなく、UQコミュニケーションズやソフトバンクが2.5GHz帯で利用している「TDD-LTE」方式を採用する。登りと下りを明確に分けて運用するFDDに対し、TDDでは1本の帯域を時間で区切って上りと下りに割り当てるのだが、ドコモはFDD-LTEとTDD-LTEを異方式CAで束ねることに成功。ここでFDD-LTEに上りを担当させることで、TDD-LTEはほぼ全域を下りに利用できることになり、トータルで370Mbpsが実現される。
3.5GHz帯は電波の特性上、広域に電波が届くサービスではないため、東京の例では渋谷、新宿などの特にトラフィックの高い場所で、既存の基地局エリアのアドオンセルとして展開される予定。すでにフィールド試験では340Mbpsを実測で計測しているという。
375Mbpsのサービスと3.5GHzによる最大370MbpsのTDDサービスはいずれも6月から提供開始される予定。昨年の段階では、2016年度にTDDサービスは予定されていたものの秋頃と言われており、また800MHz帯のフルLTE化は計画に入っていなかったのだが、いずれも予定より順調に準備が整ったため、前倒しでサービスを開始するという。どちらもサービスも、対応機器などの詳細は後日正式に発表されるが、複数の携帯端末(おそらくスマートフォンとモバイルルーター)で登場することが示唆された。
なお、3.5GHz帯はLTE用に各キャリアに割り当てられた新帯域だが、同帯域を使っている別のサービスもあり、こうしたサービスと干渉する恐れがある。こうしたサービスとの調整もあるため、サービス開始時期が変更する可能性もある。
将来の展開については、4×4 MIMO化による500Mbps超のサービスが2017年度中に、そして2020年の5Gサービスで1Gbpsを実現するため、さらなる進化を遂げていくとした。
災害に備えてネットワークの信頼性も向上
発表会では、災害時の対策についても紹介された。東日本大震災の教訓を得て、社会インフラとして災害対策の強化が必要であるとし、基地局の無停電化やバッテリー24時間化、伝送路の多ルート化、重要設備の分散化などを実施。また実際に災害が起きた場合のユーザー支援サービスも強化されるとともに、大ゾーン基地局をLTE対応にすることで通信容量が約3倍となり、高効率で周波数を利用できるようになった。
こうした取り組みが進んでいるおかげで、昨年以降台風や大雨といった災害時にもネットワークは順調に稼動しているという。災害時は携帯電話が重要なインフラになるだけに、こうしたシステムの強化は心強い。
このほか、災害時の基地局の燃料確保のために石油連盟と新たな協力体制を結ぶとともに、地震予測分野ではJESEA(地震科学探査機構)と協力してリアルタイム地震予測のための検証機材を全国16の基地局に設置。また、津波監視用カメラを全国16基地局に設置するといった活動も紹介された。