「ワークハード」から「ワークスマート」へ
――管理職が意識を変えるには何が必要でしょうか。
大沢さん: 私たちが描いている理想の会社人間像を変える必要があると思います。今は、何かあった時でも24時間働ける、そういう長時間労働を支えている人が評価されている。「ワークハード」ではなく「ワークスマート」に動けないといけない。
川島さん: 意識を変えるのは難しい。中高年の男性管理職は「巨人の星」で育っています。ずっと長時間労働で歯を食いしばってがんばるのが役割だと思っている。その人たちにロジックで訴えても無理なので、「親の介護」とか「おやじバンド」とか、家に帰る必要性を自分ごとにさせないと、変わらないと思いますね。
岩田さん: 言葉だけではなかなか変わらないでしょうね。ですから仕組みも同時に変えないといけない。例えば評価制度については、時間あたりの成果で評価したらいいと思います。その成果を出すために何時間働いたのかっていうことを明確にするのです。これをすれば、長く働こうなんて絶対思わない。時間あたりの生産性を高めれば評価されるという土壌ができれば残業は減ります。
中野さん: 管理職を評価するときに、いかに部下を効率よく働かせているかというところを重視すれば、意識が変わるのではないでしょうか。
「女性活躍」に必須なのは「男性の家庭進出」
――育児のために、管理職の昇進をちゅうちょする女性が増えています。なぜあなただけが全部背負い込むのか、パートナーにやってもらえないかと思うのですが。
岩田さん: 女性活躍の最大の壁の1つに「男性は仕事、女性は家庭」という価値観があると思います。これは家庭教育とか学校教育とかマスコミ発信など年数をかけてやらないと変わりません。でもまず身近でできることは、夫を変えるということ。今は、妻に活躍してもらいたいと思えば、家のことは夫も担わないと無理なのだと、女性社員の配偶者に教育する会社も出てきています。
大沢さん: 女性活躍と、男性の家庭進出がペアになることで世の中は変わっていく。女性ばかりターゲットになって意識の改革をしろといわれても、その先に長時間労働があり、家庭を犠牲にして会社に尽くさなければ昇進できないという構造がある限り、女性が管理職をちゅうちょするという状況はとめられません。
藤本さん: 20~30代のパパやプレパパの意見を聞くと、育児参加への意識は変わってきています。でも育休は無給なので、夫婦間で話し合って僕がフルタイムで働いたほうがお給料がいいから、ママが育休をとってね、という構図になっている。ですから、制度も見直していく必要があると思います。
中野さん: 社会全体で何が起こっているかというと、男性に変わってほしいのに「パタハラ」がひどいということです。それは企業に変わってほしいなと思うのですが、個人として、夫婦としてできることとして「流出してください」というのがあります。優秀な女性たちの間では、既に起こり始めていることですが、変わらない企業をさっさと諦めて転職する。企業の人材獲得競争が激しくなる中で優秀な中堅男性がどんどん転職していけば、企業は本当に焦るのではないでしょうか。そういう形で社会や企業が変わっていけばいいなと思います。