3つの収入源 - 国内でも追随の動きがある?

岸田氏は、動画配信サービスを運営することで通信事業者は3つの収入源を手にすると分析。それは月額料金の「サービス収入」、パケット使用による「通信収入」、アメリカでは一般的になっている「広告収入」である。

通信収入と聞くと、パケットを消費させることによる増収がすぐに連想されるが、このほかにも特定の動画視聴で消費するパケットを無料化することで、契約者の獲得・維持を狙う手法もある。米Verizon社などが既に導入している「ゼロレーティング」と呼ばれるビジネスモデルだ。日本国内でも昨秋、J:COMモバイルがJ:COM TV契約者向けにパケット非課金サービスを開始して話題となった。

J:COMモバイルでは昨秋から、特定の動画コンテンツが見放題になるパケット非課金サービスを開始している

米国市場では広告収入へ注力する動きもみられる。Verizonの見立てでは、デジタル広告は2016年にプリント広告を越え、2018年にはテレビ広告を越えるとのこと。そして2019年にはデジタル広告の50%をモバイル広告が占めるようになる、とする観測だ。

このほか米AT&Tでは、ショッピングやアンケートに回答することで、コンテンツ提供者から消費者にデータ通信量が付与されるサービスを開始している。Verizonもこれに追随する構え。コンテンツ提供者がスポンサーとなることから、スポンサードデータの広告収入と呼ばれる。岸田氏は、その仕組みを「モバイルデータをカレンシー(通貨)と捉えている。市場には、通貨ではなく”データ通信”が流通する」と解説。ただ日本市場ではポイントのマーケットが発達しており、同様の動きが国内でも見られるかは懐疑的だった。

最後に、岸田氏は「国内の有料動画配信サービスは1,000万人、1,000億円規模の巨大な市場。動画配信サービスを持つ通信事業者は、戦略のオプションを多く持てる。ただ、戦略的にどう位置づけるかは、まだ各社とも模索中だ」とまとめた。