ファンレスでもCore mのパフォーマンスを引き出す工夫
さて、「ThinkPad X1 Tablet」は、CPUに第6世代Core mを搭載したファンレス仕様の製品だ。Core iプロセッサとファンによる冷却機構を搭載した他社製品と比べ、静粛性が高いことに加え、消費電力も抑えられる。
一方で気になるのはパフォーマンスだが、レノボが実施したベンチマークテストによると、ゲームを想定したテスト(3DMark)では、それなりに差が出るが、オフィスアプリを想定したテスト(PCMark)での差はわずかで、ファンレスながらCore mの性能を引き出している。
「問いたいのは、通常の使用に問題なく、静かでガソリン(電力消費)も少ないハイブリッドカーがいいか、パフォーマンスは高いがうるさくて、ガソリン食いのスポーツカーがいいかということ」と木下氏。
ファンレスでもプロセッサのパフォーマンスを引き出す技術として、「ベイパーチャンバー」と「インテリジェントクーリング」を採用する。冷却機構としてよく使われるのがヒートパイプだが、ヒートパイプは冷却効率を上げようとすると厚みが必要になるため、薄型モデルには向いておらず、「ベイパーチャンバー」が使われている。
ThinkPad Helixでも「ベイパーチャンバー」を使ってファンレスが実現しているが、「ThinkPad X1 Tablet」では水路を最適化したほか、チャンバーの構造を2層から3層にすることで熱伝導率を上げている。
一方の「インテリジェントクーリング」は、使用している状態に応じてTDPを調節する仕組みで、タブレットとして使っているときはTDPを4.5Wで設定し、キーボードと組み合わせてノートPCとして使う場合や、モジュールを付けている場合には、TDPを上げてパフォーマンスを向上させる。
薄さと"赤いポッチ"の両立
ThinkPad Helixでは、トラックポイントとバッテリを内蔵した「Ultrabook Pro keyboard」と、それらがなく薄さと軽さ重視の「Ultrabook keyboard」を用意していた。
これはつまり、トラックポイントと薄いキーボードの両立が難しかったということだ。しかし、ThinkPad X1 Tabletでは、できるだけ薄いキーボードとしながらもトラックポイントの搭載という大きな技術的挑戦をしている。
薄くてもそれでいてThinkPadらしい打鍵感を実現すべく、キートップの下にあるラバードームを20種類以上試作し、微調整を繰り返すことで最適なキータッチを追及。加えて、キートップが下に当たる際の衝撃を吸収して底付き感を低減するソフトランディングデザインを採用している。
トラックポイントについては、通常はモジュールをキーボードがあるベースプレートに貼り付けて固定するが、ThinkPad X1 Tabletではそれが使えない。そこでキーボードカバーの外壁に付けることで剛性を持たせている。
また、トラックポイントは高さが低くなればなるほど、感度が鈍くなってしまうが、さまざまな形状のキャップを作成。シミュレーションやユーザーテストを繰り返し、専用のキャップを新たに開発したほか、メカとソフトウェアの両面からチューニングを施して、最適な感度設定を施したという。
インタフェースも最新に
このほか、ThinkPad X1 Tabletでは、USB Type-CやWiGigなど最新のインタフェースを搭載している。USB Type-CはPower Deliveryに対応しているのが、この調整はかなり苦労したとのことだ。「USB Type-Cの仕様策定が遅かったことや、仕様もあやふやな部分があり、そのまま鵜呑みにしすぎると痛い目をみる」と木下氏は語る。
WiGigについてはタブレットとして使うだけではなく、PCとして使う場合、本体がどういう状態にあるかなど、さまざまな使用環境を考慮してアンテナレイアウトを決定したいう。
また、指紋リーダーも最新のタッチ式を採用。これまでよりもセキュアに指紋認証が行える。リーダーは本体のカバーと基板の間ぎりぎりのところに収めているが、ほかの部分の強度を落とすことなく入れるのに苦労したという。
内部の様子も公開
説明会では本体を分解した様子も公開。薄型の本体に合わせて基板も相当な薄さとなっていた。